終章~ずっと貴方と共に~

 穏やかな光が射し込む空間には流行の洋楽が流れ、フィルターから落ちるコーヒーが香しい匂いを漂わせていた。 騒がしい喧騒から、一歩外れた場所にあるカフェは、疲れた現代人が集う憩いの場だ。 最近になり新しく店主になった青年は、芸能人やモデルばり…

第36話 上がるではなく落ちる

「ここは、魔物の森? 深層部か」 改めてリューウェイクが自分の周囲を見回すと、積もった雪は見当たらず、青々とした木々が目にとまる。 真冬の季節にそぐわない景色だが、水晶を収めた祠よりもさらに奥にある、森の深部であれば納得だ。 人の世界と神の…

第35話 一番会いたかった人

 離宮へ来て初めて出た部屋の外――二階フロアはそれなりに豪奢だったが、一階へ下りればわりと殺風景だった。 この場所の用途として、幽閉される者は一階へ下りられないからだろう。 見張りのうち、三人はすっかり眠りこけており、一人だけはっきりと意識…

第34話 事態が動き出す

 目覚めてから十日以上過ぎた頃、リューウェイクは見込みの甘さを呪った。 このくらいの時間は考慮していたものの、ただ待つというのは辛いものだ。さらに時間が過ぎる感覚が遅く、長いと感じるため非常に気を揉む。 それ以上になにが一番辛いかと言えば、…

第33話 想像もしない行動

 今回の首謀者は誰なのか。 アルフォンソは辛辣さはあるが、効率重視な性格が影響しているだけで常識人だ。 ミレアは感情的に動く面はあっても平和主義なので、利益のために息子の自由を奪うなどと考えも及ばないだろう。 となれば残りのどちらか、いや残…

第32話 新年の準備

 突然の前陛下の来訪で、城は少し慌ただしい日が続いている。 ふた月も過ぎればいい加減、通常の流れに変わるはずだが、新年を迎える準備に移行して引き続き、城の従事者は忙しい日々を送っていた。 リューウェイクも例に漏れず忙しく、公務に加え騎士団の…

第31話 家族としての存在

 黙っていれば厳しい眼差しで、貫禄があるように見える国王グレモントは、本来の性格は生真面目で人を言い負かす性質ではない。 例えるなら慎重すぎる模範生徒のような人。 堅実な下地作りをグレモントが行い、行動力のあるアルフォンソが足りない部分を補…

第30話 前触れのない訪問

 自室へ戻り、謁見にふさわしい衣装に急いで着替えたが、支度が終わるより先に迎えが来ていたようで申し訳ない顔をされる。 グレモント専任の近衛隊は騎士団からの選抜ゆえ、リューウェイクと少なからず交流がある者たちばかりだった。 とはいえ無駄口を利…

第29話 第一王子ルーベント

 応答石へ現在地を知らせたので、湯浴みをして部屋を出る頃には、店の前まで馬車が迎えに来ていた。「なんだろう。これは騎士団じゃなくて城でなにかあったかな」 普段より少し速度を上げた馬車に揺られ、正門を抜けた辺りでリューウェイクは首をひねる。 …

第28話 再び混じり合う想い

 舌や指先が肌を撫でるたび、リューウェイクの口から熱のこもった息が漏れる。 胸の尖りにしゃぶりつく雪兎の頭を抱き込めば、さらに赤く膨らんだ場所をもてあそぶように甘噛みされた。「んぁっ、あぁっ」 尖りに絡みつく舌の感触がたまらなく、緩く波打つ…