06.高ぶる感情
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 俺にまたがった雪近は至極楽しげに笑い、嬉々として下肢に手を伸ばしてくる。散々雪近の色気に当てられた俺の息子は、バスタオル越しでもわかるくらいに張り詰めていた。正直言うとあまり触れられるとすぐにでもイってしまいそうなほどだ。しかしそれでは男としてかなり情けなさ過ぎるので、意識して欲を抑え込む。
 けれど雪近の手はタオルの下へと潜り込み、パンパンに膨れた熱をきつく扱く。長い指が絡みつき、指先が張り出した部分を撫で回す。手が大きいから、全体をまんべんなく刺激されて、腰が震えた。

「大悟さんきつそうだね。一回出しておく?」

「いま挿れたらみこすり半で終わりそうだ」

「んふふ、それも可愛いけど。それだと俺も寂しいから」

 苦い顔をする俺に満面の笑みを浮かべながら、雪近は腰に巻いていたタオルを解いていく。そして存在を主張するかのようにそり立った熱をまじまじと見つめる。その視線にむず痒さを覚えて、俺は雪近の両足に手を伸ばした。捕まえた太ももを引き寄せるように力を込めれば、半勃ちになっている雪近の熱とこすれ合う。
 しかしそこを刺激するように腰を揺らすと、慌てたように腰を掴まれた。さらに俯きがちの顔をのぞき込もうとしたら、覆い被さるように抱きつかれる。そして息つく間もないうちに口づけられた。性急に唇を合わせて舌を差し入れてくる雪近に驚いて、されるがままに貪られてしまう。
 唇が離れた時にはねっとりと銀色の糸が引いた。

「駄目、俺がするって言ったでしょ」

「雪が気持ちよければそれでいいのに」

「駄目だよ。俺も大悟さんが気持ちよくなってるとこ見たいんだから! 手でするのと口でするの、どっちがいい?」

「してくれんの? じゃあ、こっち」

 じっとこちらを見つめてくる雪近の顎を掴むと、ぐっと唇に親指を押し当てる。うっすら開いたそこにさらに指を押し込んで、口を開かせて柔らかな舌に触れた。唾液をまとった舌を指の腹で撫でると、小さくくぐもった声が漏れる。

「雪のこれで舐めて」

 少し潤んだ瞳を見つめ返しにんまりと笑みを浮かべれば、ゆっくりと身体を起こして雪近は下へと移動していく。けれどふと思い立った俺は引き止めるように腕を掴んだ。

「なに?」

「ん、俺も雪に触りたいから。脚こっちにしてまたいで」

「やだ、そうしたら大悟さんの顔が見えない。一回イクまで我慢して」

 不満をあらわにした顔で俺を睨むと、掴んだ俺の手を払い雪近は下肢に顔を埋める。勃ち上がった竿を舌でたっぷりと撫でられ、やばいくらいに腰がしびれた。小さく先端に何度もキスを落とされて、張り詰めた熱は情けないほどにビクビクと先走りをこぼしながら震える。これで熱い口の中に飲み込まれたらどうなるだろう。それを想像して喉が鳴ってしまう。

「大悟さんはどこが好き? カリ? 裏筋? やっぱり先っぽ?」

「ゆ、雪。楽しそうなのはいいけど。俺、もうあんまり我慢できないぞ」

「ごめん、ごめん。すぐイかせてあげるから」

 身体を起こして俺のモノをもてあそんでいる雪近を見下ろすと、キラキラとした目を細めて唇を歪めた。意地悪く笑みをこらえている唇に刺激を待ち望む熱を押しつければ、ゆっくりと開かれたそれに飲み込まれていく。濡れた熱い感触と舌のざらつく感触に刺激されて身震いしてしまう。

 じゅぶりと水音を立てて唇で扱かれたら、もう頭の中が真っ白になりそうで、いまにも果ててしまいそうなのをなんとかこらえた。早く出してしまいたい気持ちもあるが、せっかく雪近がしてくれているのをまだ見ていたい気持ちもある。
 正直それほど上手いというわけではないが、一生懸命に奉仕してくれる姿はかなり気持ちを煽ってくる。時折こちらを窺うように視線を上げてくるのが、またがつんと来て堪らない気持ちになった。

「雪、口離して。飲まなくていい」

 舌と唇に散々なぶられて、さすがにもう限界が近くなってきた。しかし引き離すように肩を押すが、雪近は頑なに口を離そうとしない。それどころかきつく吸い上げてくる。涙目で目尻を赤くしながら卑猥なモノを口いっぱいに咥え込んでいる、その顔になにかがぷつりと切れた。

「ああ、もう! 雪が悪いんだからな」

 言い訳を吐き出しながら、雪近の頭を押さえ込むように両手で掴むと、熱情のままに腰を動かした。驚いたように肩を跳ね上げたのには気づいたが、ここまで来ると止める術がない。喉奥まで押し込んで、ぐりぐりと先端を押しつければ苦しそうにえずく。それでもなお激しく抜き挿しすると、涙の溜まった目で見上げてきた。
 その顔を見た瞬間、せき止めていたものがあふれ出す。

「はあ、悪い」

 口の中に出すまいと引き抜いたが、あふれたものは勢いが止まらず顔にぶっかけてしまった。しばらく目を見開いたまま固まっていた雪近は、ふと我に返ると吹き出すように笑う。そして顔に飛び散ったものを手のひらで拭い、それをべろりと舐めた。

「大悟さんあんまり一人でしないの? 結構濃いよ」

「最近は忙しかったんだ」

「じゃあ、結構溜まってる?」

「一回や二回じゃ収まんないかもな」

 小さく首を傾げてこちらを見る瞳に、意地悪く口の端を持ち上げてしまう。そして乱雑に脚を掴むと雪近をベッドに転がした。脚をぐっと胸まで押しつけて、尻を高く上げさせると窄まりを指先で撫でる。ぐにぐにと柔らかなそこを押せば、指を飲み込もうとヒクヒクと動く。その動きに気持ちが一気に高ぶり、思わず唇を舌で舐めてしまった。

「早く、挿れてよ」

「駄目、まだ」

「え?」

「雪はこういうことされたことないだろ」

 両足を肩に担いでぐっと体勢を低くすると、小さな孔を舌で撫で上げる。身体が跳ねて、逃げ出そうと身体に力が入るが、両手で腰を鷲掴みにしてそれを遮った。こちらをまっすぐに見つめる目を見つめ返せば、ゆだるように雪近は身体まで朱色に染める。その反応に俺はほくそ笑み、淡いピンク色の窄まりに吸い付いた。

「や、やだ。大悟さん、それやだ!」

「雪のやだは聞き飽きた。また言ったら次も指だけでイかせるからな」

「指じゃなくて、大悟さんの挿れてよ」

「挿れる前にたっぷりほぐしてやるから」

 舌を伸ばしてひだを一つずつめくるように舐めると、内ももが小さく震える。唾液を含ませて奥まで舌を差し入れれば、上擦った声で駄目だと繰り返す。いやだの次はそれか、と思わず笑ってしまう。それでもしつこいくらいに内側を撫でてやれば、ゆらりと腰が揺れ始める。うっすらと開かれた赤い唇からは熱い吐息がこぼれて、見ているだけでイキそうなくらいに色っぽい。

「大悟さん、早く、挿れて。足りない」

「そんなに欲しいのか? さっきからヒクヒクして物欲しそう」

 唾液と伝い落ちてくる先走りでびしょ濡れになったそこは、指と舌でいじられぽってりと膨らみひどくいやらしい。いまはもう三本の指を簡単に飲み込んで、うまそうにそれを銜えている。できればもう少したっぷりといじめてやりたい気持ちはあるが、訴えかけてくる視線がかなり切羽詰まっていた。
 これ以上はさすがに可哀想になり、俺はゆっくり身体を起こす。

「このまま挿れても平気そうだけど、少しローション足そうか」

「いい、もういいから!」

「よくない。ちょっと待ってゴム」

「いらない! そのままでいい」

「こら、駄目だって。焦らない」

 口を引き結んで泣くのをこらえている雪近の顔にキスを落とすと、サイドテーブルに置いていたローションとゴムを掴んだ。ゴムをつけているあいだも、ローションをこぼすあいだも、雪近の目はまっすぐに俺を見つめる。あまりにもまっすぐなその視線に口元がにやけてしまう。

「正面からでいい?」

「大悟さんの顔が見ていたい」

「そう、じゃあ、挿れるぞ」

 腰を抱えてゆっくりとぬかるんだ窄まりに熱を押しつける。大きく広がったそこは切っ先を少しずつ飲み込んでいく。さらに腰を進めれば、雪近は身体をのけ反らせてシーツを握った。はっはっと短く息を吐き、押し込まれる圧に耐える首筋に汗が伝う。

「大丈夫か?」

「や、っぱり、大悟さんの、大きい」

「さっきまじまじと見てたもんな。ほかのやつより?」

「いままでで、一番」

「そっか、じゃあ、ほかのと比べられないように、じっくり俺のを身体に覚えさせてやるから」

 体重をかけて根元まで押し込むと、掠れた嬌声が上がる。最奥を何度もこすり上げ、喉を引きつらせる雪近を見下ろした。震える身体をこらえるように両手でシーツを掴み、腰をくねらせるその艶めかしい姿態は極上だ。ふつふつと湧き上がる興奮に毛が逆立つような感覚を覚える。
 腰を引いて引き抜くと、それを拒むみたいに内側がうねった。それが堪らなくて焦れったいくらいゆっくりと抜き挿しを繰り返す。

「ああぁっ、ぅん、大悟、さん」

「雪、気持ちいい?」

「ぁっ、ん……いい、気持ちいい。もっと、もっとちょうだい」

「可愛い」

 甘えた声でねだられると悪い気がしない。少し抉るみたいに中をかき回せば、こらえきれなくなった雪近の声が耳に心地いいくらい響く。それをさらに誘うように激しく揺さぶると、甘ったるい声が俺に縋りついた。背中を抱き込む腕をそのままに、胸元に身体を引き寄せる。

「雪、こっち向いて」

 惚けた顔をする雪近の耳元に囁きかけると、それだけでも肩を震わせた。こめかみや頬に口づけ、半開きになった唇を塞げば、くぐもった小さな声がこぼれる。それでも舌を差し入れると、一生懸命に応えようと舌を絡めてきた。熱くなった口内を優しく撫で、舌をざらざらとこすれ合わせる。
 口の中に溜まった唾液を飲み下して喉が上下する、そんな仕草だけでも熱が高まった。首筋に噛みつきながら下から突き上げれば、しがみつく腕の力が強くなる。

「だ、いご、さん、もう駄目、イキそう」

「いいよ。何回でもイかせてやる」

「んんっ、そこ、もっと、して」

 背中をかき抱く指先にギリギリと力が込められる。ヒリヒリとした痛みを感じるけど、その痛みがまた堪らない気分にさせられた。夢中になっている雪近は必死にしがみつきながら、浅ましいほどに腰を振る。その快感を追い詰めるように律動を合わせれば、抱きしめた身体がぶるりと震え、あいだでこすれていた雪近の熱から白濁があふれた。

「まだ、休んじゃ駄目だぞ」

「ま、待って」

「待たない。俺、まだイってない」

「あっ、や、待って!」

 まだ快感の余韻に浸る身体を揺さぶると、吐き出したばかりの熱がまた芯を持ち始める。腰を掴んでガツガツと奥を舐れば、雪近はボロボロと涙をこぼしながら喘いだ。イったばかりの身体では声をこらえることができないのか、ひっきりなしに甘やかな声が吐き出された。その声を聞いていると感覚が麻痺してくる。
 身体は昂ぶり熱くなるのに、頭はやけに冷静で。どうやったらもっと雪近を啼かせられるかと考えてしまう。

「大悟さんっ、駄目、駄目、またすぐ、イっちゃうからっ」

「雪、空っぽになるくらい、しようか」

「ああっん、や、駄目」

 しがみつく身体をベッドに押し倒して、脚を抱え上げて張り詰める熱を突き立てた。抵抗する余裕もない雪近はガクガクと揺さぶれて、もう半分くらい意識が飛びかかっている。
 それでも食らい尽くす勢いで攻め立てれば、今度は吐き出さずにびくんと大きく身体を震わせた。そして一際強く中がうねって、それに引き絞られるように俺はゴムに熱を吐き出した。

 その瞬間ひどい倦怠感が襲ってくるが、こちらに向けられる視線に気がつき口の端を上げる。そっと手を伸ばして、乱れた黒髪を梳くと上気して赤くなった頬を優しく撫でた。唇を指先でなぞれば、小さくその先に吸い付いてくる。それが可愛くて、俺は身を屈めて柔らかな唇に口づけた。

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