初めての気持ちいいこと
身体の内側に、お湯が入り込むという違和感で、ふるりと幸司の肩が震える。しかし真澄は遠慮もなく指を動かし、さらには尻の孔を広げた。
「あっ、やっ、真澄さんっ、なにしてるの? そ、そんなとこ、き、汚いよ!」
「なにって、真澄のこのふっといのを、こうちゃんの中に入れる準備」
「え? え? な、なに?」
「これだってば」
ぐにぐにと身体の内側をいじられて、頭が混乱してくる。
真澄の言葉の意味が、わからなくて慌てふためけば、尻の割れ目に熱を感じる硬いものが押し当てられた。
それはぬめりを、身体に擦りつけるようにしてくる。初めての感触に、大げさなほど幸司の肩が跳ね上がった。
とっさに後ろを振り返ると、そこには自分の股のあいだにもある、もの――よりかなり大きな逸物があった。
「うそっ」
「こうちゃんってば、ほんとに鈍いんだから。あんなにくっついてて気づかないとか、こっちが驚いちゃう。真澄は胸、まったくなかったでしょう? 手だってこうちゃんより大きいし、喉仏だってちゃんとあるし」
「た、確かに……で、でも合コンに、えっ、あっ」
「だから数合わせだってば。可愛すぎて、もうほんと無理」
ぶちゅっとなにかが吐き出される音がして、尻にたらりと粘液がこぼれる。
身体をひねってもう一度後ろを見れば、ちょうど真澄がローションの入ったボトルを、放り投げるところだった。
「ちゃんと気持ち良くしてあげるね」
「や、やだっ、待って! 俺、女の子ともまだなのに」
「やった、こうちゃんの初めていただきまぁす」
たっぷりこぼされた液体――ローションの滑りを借りて、真澄の指がさらに奥へと押し込まれる。
逃げ出そうと腰を引けば、がっちりと押さえ込まれて、ぐちゃぐちゃと音が鳴るほどかき混ぜられた。
「そ、そんなにしたら、壊れるっ」
「大丈夫、痛くしないから」
「そういう、こと、じゃないっ」
尻の中の異物感がひどい。真澄の言うように、まったく痛みはないけれど、細い指が入っただけなのに、圧迫感がある。
さらにはローションの粘る音で、耳まで犯される気分になった。
「柔らかくなってきたよ」
「そんな、実況、いら、ない」
浴室の壁にしがみついていても、足が震えて、立っているのがやっとだ。それでも後ろから、真澄に身体を押さえ込まれているので、膝をつくことすらできなかった。
これまで見てきた真澄は、可憐な女の子――と言うイメージだったが、いま背後にいるのは、完全に獲物を捕らえた雄の獣。
耳朶に噛みつかれて、このままでは食べられてしまう、そんな恐怖に似た感情が湧いた。
「ま、す、みさ、んっ、もうやだ、怖い」
「すぐに気持ち良くしてあげるから。いい子いい子」
「……あっ」
じわりと浮かんだ涙を唇で拭われる。それとともに中の指が、なにかを探るように動かされた。
その途端に、ゾクッとした感覚がする。
真澄の指先がトントンとそこを叩けば、無意識にひくんと身体が跳ねた。突然の自分の反応についていけず、幸司は驚きのあまり硬直する。
「ここがこうちゃんのイイところ、だね」
「な、なに?」
「前立腺、聞いたことない? 男の子が気持ち良くなれるところだよ」
「……前、立腺? マッサージ?」
「そうそう、マッサージ」
「嘘っ! これ、ちが、うっ……ぁっ」
背中から小さく笑った気配を感じて、幸司は身体をよじる。しかし先ほどの場所を、さするように撫でられ、また身体がヒクついてしまった。
じわじわと広がる感覚が、気持ち良さだと気づくと、羞恥で顔が熱くなる。
「こうちゃん、可愛い」
「んっ、んっ」
こんな無理矢理の行為、嫌なのに気持ちと反して、身体が反応する。首筋や背中にキスをされ、胸がドキドキとした。
虐げられているはずなのに、相手が真澄だと思えば、本気で抵抗できなくなる。
もしかして自分は、マゾっ気があったのだろうか、そう考えると頭が混乱した。
いくら好みの相手でも、普通こんなことをされたら、幻滅して当然だ。だがいまの幸司はそれどころか、気持ちの良さに順応し始めている。
「あっ、ぁっ、んっ」
「声が可愛くなってきた。もういいかな」
「む、むりっ! そんなの、入らないっ」
「平気平気。こうちゃんのここ、もうトロトロだから」
「ひぁっ」
どれほど孔がほぐれたか、示すように指を抜き差しされる。ローションがあふれ出る感覚と、激しく指が出入りする感覚に、この先の展開を想像させられた。
いやいやとするように首を振るけれど、真澄は手を伸ばして、幸司の立ち上がっていた熱を握る。
自分でも気づいていたが、尻の孔を弄られただけで、しとどに先走りをこぼしていた。大きな手に擦られるだけで、いまにも吐き出してしまいそうだ。
「こうちゃん、気持ちいいんだね」
「よ、よくな、いっ」
「嘘をつく子は、うんと可愛がってあげないとね」
「ぁあっ、ん、やっ」
前と後ろの刺激にたまらず腰をくねらせると、耳元に熱い息がかかった。自分だけではなく、真澄も興奮している。それを感じれば、きゅっと奥が収縮したのを感じた。
「あ、ゴム忘れちゃった。まいっか、風呂場だし」
「う、うそっ、駄目! ぁっ、や、やっぱり、無理! それ、入んないっ」
散々いじられた小さな窄まりだが、指など比ではないものが押し当てられて、さすがに血の気が引く。
抵抗するように幸司がもがくと、さらに壁に押しつけられる。
しまいには、真澄が着ていたバスローブの紐で、手首をきつく縛られた。
そして間を置かずに奥へと、張り詰めた熱を押し込まれる。
「やっ、く、苦しいっ、抜いて、抜いてっ」
「こうちゃんほんとに初めて? ここキュンキュンしちゃってる」
「ぁっ、ああっ……んっ、やっぁっ、んんっ」
ローションがぬちゃぬちゃと粘り、肌がぶつかる音がバスルームに響く。中が押し広げられる感覚が、ゾクゾクとさせられる。
湿り気を帯びた声が漏れ出して、幸司は必死で唇を噛んだ。けれどそんな小さな抵抗は、すぐさま真澄の手でこじ開けられる。
口の中に指を突っ込まれると、噛むわけにはいかないという意識が働いてしまい、抑えきれなくなった声が卑猥な音に混じった。
「ぁっあっ……やっ、ぁ、ぁっ……んっ」
「こうちゃんすんごく可愛いから、中にたっぷり注いであげるね」
「んぅっ」
ぐりぐりと中を擦られ、か細い声を漏らす口をふいに塞がれた。
伸びてきた手に顎を掴まれ引き寄せられて、深いキスをされる。舌をねじ込まれて唾液が溢れる。
初めてのキスなのにあんまりだ、なんて考える余裕は欠片もなかった。