
はじめての恋に臆病になっているあの子は些細な失敗をするたびに涙をこぼす。嫌われたくはないと必死でしがみつく。
そんなに君に想われている人は幸せ者だ。それが自分だったらいいのにって思ってしまう。
「おい、靖、練習台に付き合えよ」
「うん、いいよ。わぁ、すごい豪華なお弁当」
「朝、四時起きで作ったからな」
「最近ますます料理が上手くなったね。この卵焼きなんか綺麗な黄金色」
お弁当に、編んだマフラーに、クリスマスプレゼントにバレンタインデー。そろそろ練習じゃなくて本番に挑んでも良さそうなのに。こんなに健気な君ならきっと誰だってイチコロだよ。
「おいしいね」
「そうだろ、お前の好きなもの詰め込んだからな」
「わざわざ僕に合わせてくれたの? ありがと」
「……そろそろ気づけよな、このど天然め」
小さくぼそりと呟いた彼に首を傾げたら大きなおにぎりを口に突っ込まれた。