桜の下に
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さくら、さくら、花開いたその姿も美しいがちらちらと花びらが舞うのもまた一段と美しい。
アパートの二階から臨むその景色は古びたベランダと相まってなんだか一昔前へとタイムスリップしたかのように思える。
それをさらに助長させるのは隣で花見酒を楽しむ彼の姿。
着流しに杯を片手に。なんとも色褪せた一場面だと、口の端を上げながらこちらも酒を喉に流し込む。

「桜の下に埋まってるのは」

「死体だっけ?」

「違う違う。君への十年後の手紙だ」

「え? 掘り出しに行かないと」

 慌てて下を覗き込んだ俺に彼は気の早いやつだと大きく笑う。十年先、それってまたここで桜を見ようってプロポーズ?

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