君と勝負

「お前を殺す」ふいに聞こえた物騒な台詞に驚いて振り向けば、燃えたぎるような瞳がそこにある。息を飲んだ俺に、彼は不敵な笑みを浮かべた。「いざ、尋常に勝負!」「えっ? ちょっと! これはそういうゲームじゃない!」隣でコントローラーを握る彼に突っ…

君への想い

あの日から、ずっとこの時を待っていたのだ。待ち焦がれた瞬間に胸が躍る。誰もいない教室でそっと背後に忍び寄り、そして俯く君へ両手を伸ばした。「だーれだっ」「一年B組、南雲真司、古典的な遊びをするな!」「あいたっ、なんか恋人っぽいでしょ?」振り…

その先にあるもの

その瞬間を待つ。君の口から導き出されるその答えを待つ。カチカチと響く秒針の音。手の平に汗を掻くような緊張感が漂って、僕の口の中はカラカラだ。そして数秒後、キラリと瞳が光ったように見えた。「ロイヤルストレートフラーッシュ! 君の負け!」弾んだ…

アンハッピ-?

次に僕の唇に触れてきたのは、君の、指ではなく。鈍く光る銃口。ニヤリと口の端を持ち上げて笑った、君の目には愉悦の色。恐る恐る両手を挙げる僕に、君は観念しなさい、と言う。けれど引き金を引く瞬間、銃口は上向いた。「ハッピーバースデー!」瞬く目の前…

繋げない想い

お前の代わりはいないんだよ。そう言ってきつく抱き寄せられた。柔らかな優しい香りが鼻孔に広がって胸が締めつけられる。少し前の自分ならば、その言葉に喜び勇んで腕を伸ばしていただろう。けれどいま、君の左手に光るものがある。それはさよならの合図。こ…

桜の下に

さくら、さくら、花開いたその姿も美しいがちらちらと花びらが舞うのもまた一段と美しい。アパートの二階から臨むその景色は古びたベランダと相まってなんだか一昔前へとタイムスリップしたかのように思える。それをさらに助長させるのは隣で花見酒を楽しむ彼…

眠る君の寝顔を見つめる

いつも僕は寝起きが悪い。何度も目覚まし時計が鳴って君の呆れた声で目を覚ます。だけど時々、ほんのたまに君より先に目が覚めるときがある。そんなときはいつものキリリとした顔じゃない、君のあどけない寝顔を見ることができる。それが見られた日はとても特…

じれったい距離感

ねぇ、どうして君はその一歩を踏み出そうとしないの?僕と君の距離はあとちょっとなのに、いつまで経ってもそこから動こうとしない。僕が手を伸ばすのを待ってる、本当はそれに気づいているけど。それでも君からの言葉が欲しいって思うのは贅沢なのかな?好き…

心が同じ方向を向く

君と僕を知る人たちはみんな口を揃えてお前たちは正反対だなって言う。見た目も、性格も、好きなものも、嫌いなものも、こだわるものも、どうでもいいものも、一つとして重ならない。それでも僕たちは一緒にいるようになってもう越えた年は片手じゃ数えられな…

君の好きな人

 はじめての恋に臆病になっているあの子は些細な失敗をするたびに涙をこぼす。嫌われたくはないと必死でしがみつく。 そんなに君に想われている人は幸せ者だ。それが自分だったらいいのにって思ってしまう。「おい、靖、練習台に付き合えよ」「うん、いいよ…