はじまりの恋~After Days

嫉妬2

 この人の世界は心のままに美しくて優しいんだと感じた瞬間だ。だからいつだって俺は彼の隣にいたいって思ってしまう。彼の心に触れると自分も優しくなれるような気がするのだ。「あれ? 西岡?」「え? あ、えーと、あっ! もしかして、沢木?」 二階に…

嫉妬01

 嫉妬で心が真っ黒になって苦しかったと涙を浮かべて嘆くその人は、俺から見れば真っ白すぎて眩しいほどだ。彼はいつでもまっすぐな心で俺を愛してくれる。それは生きにくい世の中にあっても驚くほど純白な想いだ。 そんな無垢な心をかき乱すことができるの…

嫉妬02

 彼と一緒にいられることが僕のすべてだ。それができるならなんだってしたいと思える。変わらなくちゃ駄目なんだ。 そうだ、平和ぼけしているのは僕のほうだ。これでは目の前にある優しさに甘えて、ただ両手を伸ばしているだけの子供と一緒だ。愛情を向けら…

嫉妬01

 出会ってずいぶん月日が流れたけれど、そういえば僕は優哉の交友関係をあまり知らない。友達とか紹介されたことがないし、滅多に私用で家を空けることもない。 平日の休みになにをしているのか詳しく知らないから、誰かと会っている可能性はあるがやっぱり…

バースデー04

 心許ない感覚に思わず腕を伸ばして首筋に抱きついたら、背中をあやすように叩かれた。「少し横になっていたほうがいいですよ。もう目が回ってるでしょう」 僕を抱き上げた優哉はまっすぐに寝室へと足を向ける。まだ眠るつもりはないと抵抗したいけれど、頭…

バースデー03

 僕に危機管理能力がないと言うよりも、周りが予想外の反応を示すのではないかと思う。僕みたいな平凡な人間を捕まえて色気があるだの、人を寄せつけるだの言われてもピンと来ない。変な色眼鏡で人を見ているのではないだろうか。 どう考えても人を惹きつけ…

バースデー02

 無事に出勤をして昼休みも過ぎた午後。窓からは梅雨の曇り空が広がって見えた。雨が降りそうで降らないすっきりとしない天気だが、今日の楽しみを思えば少しは気分が晴れる。しかしそれでも頭を悩ませるものはあった。「どうしようかな」 学校は今月末から…

バースデー01

 誕生日を祝うのは生まれてきてくれたことに感謝するということだ。その人が生まれたことを喜ぶべき日だと思う。だからその日を祝えるのとても幸せなことだろう。 そんなことを考えながら僕は、手に持ったボウルの中身を細心の注意を払いながらかき混ぜてい…

約束07

 俺はいつも約束を違えてばかりだけど、もう二度と彼を一人にしないと誓いたい。離れたあの時間は無意味なものではなかったが、それでも彼にとっては長い時間だったろうと思う。 だから俺はこれから先、彼を残してどこにも行かない。目の前にある笑顔が続く…

約束06

 いつも彼は隣で優しく笑う。その笑みに安心してしまうけど、その内側にある感情を時々見落としていまいそうにもなる。だから時折こぼれる小さな本音を聞くたびにはっとさせられた。 彼は自分よりもずっと大人だから、感情のままに我がままを言ってくれるこ…

約束05

 両手にビニール袋を提げてこちらを見ているその人物は、高校時代クラスメイトだった神楽坂だ。彼は驚いた顔をしながらこちらに近づいてくる。そして傍にやってくると俺たちの顔をマジマジと見ながら少しぽかんとした。「神楽坂こそ、なんでここにいるんだ?…

約束04

 そこに降り立ったのは随分と久しぶりだった。改札口から見える景色は以前と大きく変わっているところはなく、なんとなく時間が急に巻き戻されたような気分になる。何年も毎日ずっと通り過ぎていた場所を見渡しながら、彼の背中を追って改札を抜けた。「ここ…