はじまりの恋

ふたりの時間05

 いつも触れて知っているつもりでいたその身体は、思った以上に華奢で抱きしめるのが少し怖いくらいだった。 けれど彼の腕はすがりつくように強く俺の背に抱きついて、真っ白な肌を朱に染めると、涙を浮かべながら何度もうわごとみたいに好きだと言うから、…

ふたりの時間04

 繰り返される愛撫に熱い息がひっきりなしに口から漏れて、かなり自分が興奮しているのがわかる。そしてそんな僕を追いつめるみたいに、藤堂の手は下へ下へと降りてゆく。そして未知なる場所に指を滑らせた。「佐樹さん、大丈夫?」「あ、ああ、うん」 気遣…

ふたりの時間03

 僕から視線をそらさずにさり気なく眼鏡を外した藤堂の指先を見ていたら、ふっと目の前の口角が持ち上がった。それに気がつき慌てて視線を上へ向ければ、目が合う前に唇を塞がれてしまう。「ぅんっ……」 構える間もなく深い口づけで攻められると残念なくら…

ふたりの時間02

 それに藤堂は根っこが真面目だから、下世話な話が好きじゃない。というよりは、あまり昔の自分に触れられたくないのかもしれない。「あの人の言うこと真に受けないでくださいよ。反応を楽しんでるだけなんですから」「んー、それはわかってはいるんだけどな…

ふたりの時間01

 週末、いつものように藤堂はやってくる。今日はバイト先の歓送迎会とやらで、普段よりずっと遅い時間だけど。 日付も変わりかけた頃で、それをすまなそうにしながら帰ってきた。こちらもよく都合が悪くなり断ることもあるので、そんなことは気にしなくとも…

02.Non Sugar?

 優哉は普段、こちらがいくら粉をかけてもなかなかその気にならない。そっちに関して淡白なのかと言えば、案外そうでもないような気はするのだが、反応がわかりにくくて仕方ない。 でも――そんなつれない男が今日は珍しいくらい、まったく抵抗を示さない。…

01.Non Sugar?

 もしも自分の好きな奴が自分の部屋で無防備に寝ていたとしたら、人として、男としてどれが正しい反応か。一.起こさぬよう静かに見守る二.風邪を引かせては可哀想だから起こしてやる三.据え膳を食わないのは男じゃない 答えは――三、ではなく。四.触ら…

03.Over Pace

「いらっしゃいませー」 扉にぶら下がった重たげな鐘がカランと鈍い音を響かせた。峰岸の手によって押し開けられた扉の向こうはどこかノスタルジックな雰囲気で、独特な空気が漂っていた。 この落ち着いた雰囲気は嫌いじゃない。昼ご飯を食べた店と同様に寧…

02.Over Pace

 結局僕の言葉は聞き入られることなく、あちこちと峰岸に連れ回された。 お勧めだという落ち着いた雰囲気のレストランは、彼が言う以上に美味しかった。けれど普段からこの辺りで遊んでいるのか、峰岸の周りにはどこへ行っても人が集まり、囲まれる。そして…

01.Over Pace

 流れる人波――忙しない足早なその流れをぼんやりと眺めながら、たまらず大きなあくびが漏れてしまった。駅前広場のベンチに腰掛けて早三十分。鳴らない携帯電話を握り、程よいぽかぽかとした陽射しについウトウトしてしまう。 しかし良い気分で頭が舟をこ…

蜜月

 茜色の空が広がる夕刻。佐樹はふと空を仰いだ。 吹き抜ける風が心地よくて、自然と目を閉じてしまう。さらさらと髪が風に揺らされ、ひどく気分が良い、そう思うと自然と口元には笑みが浮かんだ。「佐樹さん、お待たせ」「あ、うん」 ぼんやり空を眺めてい…

変わらぬもの02

 毎日うるさいうるさいと愚痴を零しているが、今日は誰もいない静けさに弥彦はほんの少し寂しさを感じていた。「慣れるとそんなもんなんだろうな。うちはいつも人がいないから気にならないけどな」「寂しいこと言うなぁ。なんならうちに帰ってくる? でもき…