はじまりの恋

リクエスト短編・AfterDays

既存作アンケートでリクエストいただきました「はじまりの恋」今回は続編である『AfterDays』を書かせていただきました!短編を全4話、更新!!明日10/26はリクエスト3作目「おいしい恋が舞い降りる」の続編をお届けします!本編既読の方はぜ…

始まり14

 優哉が案内してくれる場所は少し移動したところにあるようだ。しばらく電車に揺られ、自宅マンションのある駅から三つ過ぎた場所で降りた。初めて降りるが、何度も通り過ぎたことのある駅だ。 改札を抜けて外に出ると、コーヒーショップやパン屋、スーパー…

始まり13

 ショールームで家具をそれぞれ見て回り、買い物をし終わった頃にはお昼時を過ぎて十四時近くになっていた。だいぶ遅くなったが、昼ご飯はどうしようかなんて話ながら外を歩いて、なに気なく通りかかったラーメン屋で二人とも足を止めた。 人気のある店なの…

始まり12

 目的の場所は電車に揺られて三十分、駅からは徒歩十分と少しくらいだろうか。のんびり二人で話をしながら移動する、なに気ないそんな時間が嬉しくてずっと僕の顔は緩みっぱなしだ。 相変わらず人目を引く優哉は色んな視線を振り返らせていたけれど、僕が不…

始まり11

 優哉が帰ってきて二人で暮らすようになり、気づけばひと月以上が過ぎてもう少しで十一月になる。帰ってきてからも最初の話通り、優哉は向こうの実家と日本を何度か行ったり来たりして、傍にいないことも多くあった。 思ったよりも一人きりの時間が増えて寂…

始まり10

 伝えたいことはたくさんある。僕の中にいっぱい詰まった優哉への気持ち。四年半分の想いはきっとすべて伝えるには時間が必要だ。でもこれから先、優哉はずっと隣にいてくれる。 そう思うと傍にいる限り伝えていけるのだと、なんだか幸せな気持ちになれた。…

始まり09

 佐樹さんの長湯は相変わらずだねと笑いながら、優哉は最後まで付き合ってくれた。二人で背中を流し合ったり髪を洗ってあげたり、湯船にのんびり浸かって過ごしていると時間はあっという間に過ぎる。 いつものようにうたた寝する僕のうなじに口づけて、小さ…

始まり08

 店を出てから僕の自宅マンション近くに着いたのは二、三十分くらい経った頃だ。道が空いていることもあり、想像以上にスムーズにたどり着いた。三島と話をしながらだったから、体感時間もあっという間だ。「あ、三島。マンションじゃなくて、駅前で下ろして…

始まり07

 片平がおすすめのお店はイタリアンレストランだった。シェフ一人に店員が一人で、テーブル席が四つほどの小さな店だ。長くこの場所で営業しているそうで二十年ほどになるとか。けれど店内は古びた様子もなくとても綺麗だ。 店には先客がひと組いたが、僕た…

始まり06

 こうして優哉を目の前にすると、四年と半年という時間は思っていた以上に長かったのだなと思えた。いつもどこか切なさを感じさせていた瞳は、いまでは強い光を含んでいる。まっすぐで淀みないところは変わらないけれど、前よりもきっと心が成長したのかもし…