君、想う時。

君、想う時。リクエスト短編

既存作アンケートでリクエストいただきました「君、想う時。」短編を全4話、更新しました!!明日10/25はリクエスト2作目「はじまりの恋~AfterDays」の続編をお届けします!本編既読の方はぜひ!

小さな幸せのひととき04

 朝倉とのんびりと週末を過ごしてしばらく。 従兄弟と朝倉の予定が立ち、二人を引き合わせる日を迎えた。「兄ちゃん、朝倉さんに失礼な物言いとかするなよ」「相手による」 七つ年上の従兄弟は、渋々といったていを隠さない敦生の様子に、ふんと鼻で笑う。…

小さな幸せのひととき03

 別に元カノの話は禁句ではないのだが、なんだか敦生的には言ってはいけない気持ちが芽生えている。 朝倉は敦生の元彼、ノブの話も気にせずしていいと言う。 忘れなくていいとさえ言うのだけれど、敦生は自身に置き換えて考えるとあまり良い気分がしない。…

小さな幸せのひととき02

 これまでの誤解を解き、敦生は朝倉にもっと自分を意識してほしいと伝えた。 なにもしてくれない理由が自分自身にあったと、気づかなかった数ヶ月を悔いる気分だ。「朝倉さんはさ、もっとこう、ぐいぐい来てくれていいんだぞ」「そういうことは気安く言っち…

小さな幸せのひととき01

 十月の初め、秋の気配がにわかに漂い始めた頃。 夕刻になり、学生の姿がまばらになった大学のカフェで、|敦《あつ》|生《き》は吉報を大いに祝われていた。 夏が始まる前から就職活動に勤しんでいた敦生の元へ、つい先日、内定通知が届いたのだ。「敦生…

夏に咲いた花02

 夕刻が近づき、少し太陽の光が和らいできた頃、二人は伊那に声をかけて出かけることにした。 まだ陽射しは強いからと、彼女は敦生に少しつばの広い麦わら帽子を被せてくれる。そして裸足の足にサンダルを履かせてくれた。 どれも朝倉の子供の頃のものだと…

夏に咲いた花01

 都会の夏はじりじりと地面を焦がし、コンクリートで覆われた街は陽炎のように揺らめく。 連日気温が三十度を超えるのは当たり前で、そんなうだるような暑さにげんなりとさせられる。 エアコンと扇風機で、キンと冷やされた部屋から出るのが嫌になるほどだ…

心に芽吹く花

 沈み始めた太陽は、晴れ渡っていた青空をいつしかオレンジ色に変え、高く伸びた建物や道行く人々を照らしていた。 時刻は十八時十六分――大きな噴水が、初夏の暑さを和らげる夕刻の公園、仕事帰りのスーツ姿が多く目に留まる。 みな帰路へつくのか、それ…

桜の時

 敷地にボートを浮かべられるほどの、大きな池がある広い公園――そこでは圧倒されるほどの桜が咲き乱れ、水面には淡いピンク色の優しい風景が映り込んでいる。 今夜は気温が高く絶好の花見日和だと、朝に流れるニュース番組が天気の予報を告げていた。 そ…