コンビニ

いじらしい言葉に少し胸がときめいてしまう

 黙ってるとかなり男前だし、頭良さそうに見えるし、仕事とかもバリバリしてそうな印象がある。予想に違わずモテるんだろうなと思う。いままで付き合った人どのくらいいるんだろう。綺麗系? 可愛い系? どっちでも似合いそうだな。「笠原さん? なにか顔…

悪いところより良いところが多くて困る

 鶴橋も光喜も友達と言うにはちょっと語弊がある。まあ言うならば恋人候補な訳だから。だけどそれをはっきりと認めてしまうのはなんだかむず痒い。まだ二人と付き合うと考えるには迷いがあった。しかし二人とも悪いところがないのが困る。 光喜は元からよく…

わからない感情と見えている感情の違いはなに?

 どうして気が重いなんて思うんだろう。これで答えが出るんだから、肩の荷が下りるじゃないか。やっぱり二人とは付き合えないってことになっても、それは俺の出した答えなんだから二人は頷いてくれるはずだ。そのための仕切り直しだろう。 だけどそう思うの…

好きだから身動きできなくなる

 あの時はなにも見ていないみたいな顔だったけれど、いま目の前にある苦笑いは少し悔しさも滲ませる顔だ。しかしよくあの場面を見て怒らなかったなと思う。手を繋がれたり、抱きしめられたりしただけで、目に見てわかるくらい機嫌が悪くなったのに。「見まし…

その甘さに溶かされてしまいそうになる

 言われなくたってわかってる。どんなに頭から否定しても、誤魔化しても、二人の目が本気なことくらいとっくに気づいてる。だけどその目が真剣なほど逃げ出したくなるんだ。俺は好きになっちゃいけないって心がブレーキをかける。 もう、傷つきたくないんだ…

ぐるぐると渦巻く感情の真ん中が見えない

 確かにほんの少しほだされている気がした。優しくしてもらえることに少し浮かれているんだと思う。特に鶴橋にはかなり気持ちを持って行かれそうになっている。やることなすことまっすぐだから、それに流されそうでぐらぐらとする感じ。「だけど俺は」「ちょ…

好きは簡単そうで難しい、はずなんだけど

 どうしてこうも前のめりなんだろう。鶴橋だけじゃなく光喜もだ。簡単に男が好きだとか、思い込める頭の中を覗いてみたい。人を好きになるのに理由なんてない、そんな言葉もあるけれど。いままでの概念を飛び越えるのは安易じゃない。「とりあえずさ、鶴橋さ…

そんな理由で好きになってたらきりがない

 答えを問うように見つめ返せば、鶴橋はやんわりと微笑んだ。その笑みは俺の考えていることを見透かしているように思える。だからもっと色んなことが知りたい――その気持ちが先走りそうになった。けれどそれはなんとか飲み込んだ。「行動時間が似てるのか、…

でもまだはじまりの想いが見当たらない

 それは二年半ほど前の夏頃。当時の俺は就職活動をしていて、募集の出ていたいくつかの会社へ見学に行っていた。その中で鶴橋の言葉に思い浮かんだ会社がある。それは俺にとっては飛びつきたくなるような求人で、もう絶対そこに受かりたいとその時は思ってい…

そこにはちゃんと理由はあるんだ

 俺たちの話を聞いていた鶴橋は小さく息をついた。けれどもっと気分を害した感じになるかと思いきや、見た限り冷静そうに見える。とはいえ、この数時間で見慣れた眉間のしわは健在だ。「やっぱりこれは嘘、だったんですね」「あ、うん。嘘つきました。すみま…