My Dear Bear~はじめての恋をしました

06.親愛なるあなたへ

 遊園地の中でも観覧車は人気スポットで鉄板とも言える。郊外と言うこともあり周りは高い建物があまりなく、見晴らしの良さは容易に想像できた。人気を裏付けるように人が並ぶ列もかなり長い。 しかし看板に待ち時間は二十分と書かれていたが、一周十五分程…

05.マジック・アイテム

 人混みの中で人目を気にせずに手を繋ぐなんてことは、これまでなかった。ふいに手を伸ばして、驚かれてから自分のしようとした過ちに気づく、なんてことはよくある。それなのに優しく手を握られて、いまの光喜の気分は最高潮だ。 ちょっとくらいマイナスな…

04.繋がっていたい

 遊園地に着くと、休日でありホワイトデーでもある今日は、家族連れやカップルで溢れていた。楽しげなその様子にわくわくすると光喜が目を輝かせれば、隣で小津は至極嬉しそうに笑う。 そしてワンデーパスを購入して入場すると、ふいに彼は近くのショップを…

03.小さな日常

 いつも二人だけの夜はベッドにもつれ込んで睦み合うのが常だが、その日ばかりは大人しく布団に潜り込み、翌日の楽しみを語りながら眠りに落ちた。小津が隣にいると光喜はぐっすりと眠れるのだが、今日は特によく眠れた気がする。 目が覚めた時には頭がすっ…

02.ある日、森で出会った

 笑っている顔、照れたような顔、困り顔――どんな些細な表情も愛おしさしかない。小津との恋は光喜にとって初めてのことばかりで、すべてが新鮮で色鮮やかに見える。一年が経とうとしているのにまだまだ彼が知りたいと思う。 いままでの恋はあっという間に…

01.あの人に贈りたいもの

 思いがけないサプライズから一ヶ月、お返しのホワイトデーが明日に迫った。いままで光喜は付き合ってきた彼女たちに色々なものを買ってあげてきたけれど、やはりここは自分で選んだものを、と考える。 しかし先週誕生日だった彼にプレゼント――お揃いのマ…

優しさは恋の味

 いままでの光喜はその日と言えばもらうことしかしてこなかった。誰かに贈るだなんて考えもしていない。だからショーケースの前で真剣に悩む日が来るなんて想像もしたことがなかった。 けれどかれこれ売り場を歩いて三十分。ウロウロと行っては戻りを繰り返…

二人の熱が触れる

 新しい年のはじまりは除夜の鐘の音とともに迎える。深夜とも言える時間帯にもかかわらず新年の参拝に向かう人の数は多い。その流れに少しばかり人の目を引く二人連れが混じる。 一人はほかの人たちよりも頭二つ分ほどは抜きん出ている高い上背と大きな体躯…

21.二人のこれから

 ゆっくりとした時間を過ごし時刻が迫ると、敦子と希美、そして愛犬三頭が駅まで送りに出てくれた。もっともその原因は凛太郎と茶太が光喜がいなくなるのを察して子犬のようにクーンクーンと鳴き出したからだ。 そして駅の改札でもやたらと切なげに鳴き声を…

20.優しい家族

 顔を洗ってから庭に下りると、小屋の外と入り口で寝転んでいた凛太郎と茶太が目をキラキラと輝かせて近づいてくる。いまにも押し倒しそうな勢いで走り寄ってきた二頭は、福丸同様にぶんぶんと尻尾を振っていた。 大きな身体に詰め寄られて光喜の笑い声が響…