My Dear Bear~はじめての恋をしました

17.甘やかな声※

 微かなラジオからの音が広がる中に光喜の荒い呼気が混じる。いまは本棚にしがみついていないと立っていられないのか、足を震わせながら下を向いていた。それを後ろから見つめて小津は彼の反応を確かめる。 柔らかな彼の孔は二本の指を飲み込んで、たっぷり…

16.あの頃の自分※

 風呂場に光喜を残して小津が先に出ると、静かな空間に鈴虫の鳴き声が響いていた。こんなに静まり返っている中で大丈夫だろうかとふと考える。階段を上がるとまだ妹の部屋から音楽が聞こえていた。 部屋の時計を見れば日付を少し超えたところだ。しんとした…

15.甘い誘惑※

 小津家は広い敷地ではあるが庭に注力したので家自体は平均的な一軒家。けれど身体の大きい高道のために浴室は広く作られている。息子が生まれて大きく育った時に、お父さんのお願い聞いておいて良かった、と敦子は笑った。 洗い場も広いけれど浴槽が本当に…

14.可愛い我がまま

 思ったよりも長居をした店でほろ酔いになるほど飲んで、また二人で帰って来いよと俊樹に見送られた。隣で楽しげな声で話をしている恋人は行きと同じように少しばかり気持ちが浮き上がっているのか、繋いでいる手にぎゅっと力がこもっている。 付き合う以前…

13.結んだ赤い糸

 昔の出来事を思い出す。初めて小津が俊樹に出会った時も振られた瞬間だった。それは中学を卒業する少し前のことだ。男二人の修羅場を見た彼はひどく驚いた顔をしたけれど、文句を連ねていた相手にいくらなんでもそれは酷いだろと笑った。 そしてそのあと偶…

12.久方ぶりの笑顔

 住宅街を歩き、行きに降りた駅を少し超えた先に目的の店はあった。店先に看板があり入り口には照明が灯っている。木製の扉を引き開けると、ファンキーな洋楽が空気に乗って耳に届く。 少し暗めな照明。店の中はまだ客が訪れていないようで静かだ。カウンタ…

11.温かな時間

 いまだ風当たりの強い世の中、親と円満でいられるのは少数派だろう。けれど両親は驚いた顔を見せたけれど、息子の告白にそうか、わかった、と頷いた。しかしすぐに飲み込めたわけではないことは、しばらくのあいだぎこちなかった母の様子で感じている。「心…

10.変わらない場所

 動物というものは本当に心の優しい人を見分ける、嗅ぎ分けるアンテナのようなものがあるのだろうか。公園でひとしきりボール遊びに興じた三頭は帰りの道すがら、光喜にべったりだった。 特に凛太郎と茶太は、名前を呼ばれるだけで嬉しそうな顔をして振り切…

09.運命の人

 先陣を切って歩く二頭は尻尾をゆらゆら揺らしながら歩いている。たまに振り返って視線が合うと満足したようにまた前を向く。大型犬は力が強いので散歩に苦労する飼い主は少なくない。 けれど小津家では一定の時期になると一緒に訓練学校へ通う。もう何年も…

08.綺麗なその心

 しばらく抱きしめたままでいると、もぞりと腕の中で身じろがれる。ゆるりと腕を解いて顔をのぞき込めば、頬を染めながら少し目を伏せた。そのいじらしい仕草に思わず近づきそうになって片手で押し止められる。「小津さん、みんなの前だよ。……それはちょっ…

07.まっすぐな想い

 彼に辛い思いをさせた時に、すぐに追いかけていけなかった自分のことがひどく情けなく思えた。とっさの反応ができなくて、いつも後悔ばかりする。選ぶべき選択を間違えてしまう。 それを秤にかけた時に、どちらが重いかなんてことは考えなくてもわかるのに…

06.思いがけない再会

 小さな弟分に兄貴分たちは一歩距離を置いている。飛びかかることもなく窓際近くで各々くつろぎ出す。希美に勧められて隣に腰かけた光喜は小さな福丸にデレデレだ。けれど子犬をこうして目の前にするのは初めてなようで、そわそわするものの手を出せないでい…