My Dear Bear~はじめての恋をしました

72.初めての経験※

 自分に覆いかかる影、それに驚いて光喜は身動きできないでいた。けれどふいに身体を撫でられてビクリと肩を跳ね上げる。乱れたTシャツの裾から手が差し込まれて、思わず身をよじってしまった。 それでもその手は離れていかず、それどころか身体のラインを…

71.先走る気持ちと冷静さ※

 それ以上はいけないと思うのに、高ぶる熱を手のひらに押しつけてしまう。自分とは違う感触は思っているよりも興奮させられる。できるなら直接触って欲しいけれど、さすがに光喜にもそこまでの度胸はない。 仕方なしに自分の手を突っ込んでトロトロと蜜をこ…

70.触れる確かな温度

 普段の自分はどちらかと言えば理性的であったと光喜は思う。けれど二者択一を迫られて自分で自分を追い詰めた結果が、目の前にある。風呂から上がった小津はそれを見てひどく困惑をしていた。 しかし光喜は自棄を起こした自分に気づいてはいたが、頭の中は…

69.天使と悪魔

 ゆっくりと隣にしゃがみ込み、下を向いている横顔を覗き見た。顔を近づけても反応がないところを見るとかなりぐっすりと寝ている。じっとそれを見つめていた光喜は壁に手を付いて身を屈めると、額に唇を寄せた。 本当は寝息を立てている唇にしたいと思った…

68.引き止める方法は

 こんな風に小津から抱きしめられたのは初めてだ。そういう意味があっての状況ではないことはわかっていても、高鳴った胸が落ち着かない。どんどんと早くなっていく鼓動は耳元で鳴ってるみたいな錯覚をする。 それに気づかれたらと思うと恥ずかしくなって、…

67.握りしめた温かさ

 視線が絡んでどのくらい経っただろう。二人の様子を勝利と鶴橋は黙ったまま見守っている。そのうち詰まった息が苦しくなったのか、小津が大きく肩で息をした。けれど光喜の視線は先ほどからブレることなくまっすぐだ。「俺のマンションは小津さんのアパート…

66.思いがけない本音

 心はまだ残っている、未練はまだ残っているように見えた。けれど消極的な態度を見せられるとひどく不安を覚える。このまま彼を追いかけていていいのだろうかと、必死で盛り立てた気持ちが萎れそうになった。けれど口を引き結び、光喜が顔を上げたところで戸…

65.目に見えない一線

 話をしているとまっすぐな視線を感じる。けれどそれに振り向くとすぐにその眼差しは離れていく。何度も何度も同じことを繰り返されて、胸がどんどんと切なくなっていった。想いが募って何度も言葉にしようとしたけれど、そのたびに曖昧に微笑まれて声に出せ…

64.もう少し近くに

 一人で黙々と弁当を食べる光喜に勝利からの非難はごうごうだったが、元は自分が悪いことを自覚しているのか最後はブツブツとした文句に変わった。そして時折ちらちらと目線を上げながら目の前の人の機嫌を窺う。二人で視線を合わせながら無言の会話をする、…

63.小さなヤキモチ

 ケトルポットがカチッと音を立てると鶴橋が四つのマグカップに湯を注いでいく。粉末のお茶をスプーンでかき混ぜて、カップがそれぞれの前に置かれる。オレンジは勝利、青は鶴橋、グリーンは小津、黄色は光喜。引っ越しをして、いままで以上に集まる機会があ…