You're the one

Days with you/07

 二人で抱きしめ合って、二人の音が混ざり合うような不思議な感覚になった。触れている熱が伝わっていくようで、ひどく安心する。胸元に頭を預けている日向の髪を撫でながら、雪羽は愛おしさが募るような温かい気持ちにくすぐったさを覚えた。それでもその気…

Days with you/06

 ひと騒動が終わったあともしばらく噂は尾を引いたが、いままでの二人の様子を見慣れているクラスメイトたちの対応でかなり緩和した。 それは日向が雪羽にべったりなのは今更だから、それをいまになってつついてもなにも面白いことはない。好きなら好きでい…

Days with you/05

 まっすぐとした鞠子の視線にもその目を揺るがすことなく、日向は雪羽に向かい手を差し伸べてくる。やたらと真剣な眼差しを向けられて、照れくさいこそばゆさを覚えた雪羽はやんわりとはにかんだ。そして差し出された手のひらに手を重ね、それをぎゅっと強く…

Days with you/04

 その感情をどんなに否定されたとしても譲れない想いがある。だからどんなこと言われても一歩も退けない時が必ず来る。 いつもより耳につくざわめきに気づいたのは、登校してすぐのこと。ひそひそと囁き、じろじろと視線が向けられる。けれどそのあからさま…

Days with you/03

 時間がもったいないと言った通りに、日向は足早にいつもの空き教室へ向かった。そのあいだの雪羽と言えば、ひどく大事に抱えられて、恥ずかしさのあまり胸元に顔を埋めるので精一杯だった。触れた場所から伝わる二つの音が混ざり合って、やけに早鐘を打ち始…

Days with you/02

 常日頃べったりな雪羽と日向ではあるが、それも学校の中で過ごすほんの一部分に過ぎない。二人はまず在籍するクラスが違う。二人の通う学校は生徒数が多いためにクラスも比例して多く、一学年八クラスある。そして雪羽はHクラスで日向はAクラス。教室が校…

Days with you/01

 二人の出逢いのはじまり――それは神谷雪羽が一年だった頃。長いゴールデンウィークが終わってしばらくした時のことだ。その日は昼休み前に理科の教師から、教材を授業までに運んで欲しいと頼まれた。そしてそれは旧校舎の教材室にあると教えられる。 古び…

Love you/02

 なんの躊躇いもなくその店の扉を開くと、日向は雪羽の手を握ったまま堂々と店の中に入っていく。扉に付けられたベルで来客を悟ったらしい店員が奥から「いらっしゃいませ」と顔を出す。するとその店員は少し驚いた顔をして日向を見つめ、そしてそれから雪羽…

Love you/01

休日の街中は人で溢れている。昼前からこんなにもたくさん人が出歩いているのだなと、あくびを噛み締めながらぼんやりと人波を見つめる視線がひとつ。神谷雪羽(かみやゆきは)は人が賑わう駅からほんのわずか離れたコンビニの壁にもたれていた。 楽しげな様…

Chocolate/02

 駅まではいつものダッシュで五分、なんとか間に合うと確信すれば、安心感からなのか、それともこれからのことへの高揚感からなのか自然と雪羽の口元には笑みが浮かんだ。「雪羽、今日もぎりぎりセーフだな」「おーい神谷、大丈夫かぁ?」 いつもの調子で雪…

Chocolate/01

 キッチンいっぱいに広がる甘ったるい匂い。シルバー製のボウルの中、ゴムベラで掻き回される見るからに濃厚で甘そうなそれは、慣れない不器用な手に絡みつく茶色い甘い雫。 それに悪戦苦闘しながら神谷雪羽(かみやゆきは)はそろそろ深夜と呼べる時間、午…