しあわせのカタチ

角砂糖

 朝、目を覚ましてリビングへ行くと、珈琲の香りが部屋に広がっている。そしてフライパンで油が跳ねる音がして、ベーコンの焦げたいい匂いが漂ってくる。それはほぼ毎日欠かすことがない。ゆっくりと視線をキッチンへ流してみれば、やたらとまっすぐとした広…

二人の距離

※一緒にいるようになって一年くらい―――――― 冷たい冷気を漂わせるアイスが並んだショーケースの前で、じっと立ち止まってもう五分くらい経った。それでも彼はまだ悩むようにじっと見つめている。「先輩、なに悩んでるんですか?」「新作アイス、抹茶と…

レンアイモヨウ07

 お互い真っ正直なんだろうなと思うと、ほんの少し羨ましくもある。ひねくれて素直に心の内側にある気持ちさえ言葉にできない。それを言葉というカタチにしてしまったらなにかがガラガラと崩れ落ちていきそうで、隣にある手さえ握れない。 この微妙な距離感…

レンアイモヨウ06

 なにか心の隅に残るような出来事とはなんだろうかと考えてみるが、なにも浮かばなくて次第に考えるのも疲れてくる。正直言えばもう考えるのもやめたい。いっそこの手に繋いだものを手放したら楽になれるだろうか、なんてさらにネガティブな考えまで浮かぶ。…

レンアイモヨウ05

 あちらのほうがやはり早かったようで駅に着く前にメッセージが届いていた。また電車に乗るのだろうから改札を出なくてもいいのに、律儀に外で待っているようだ。中にいてもらったほうが説明が省かれて楽だったとも思うが、仕方ない。 駅前の広間の一角、そ…

レンアイモヨウ04

 残りの時間はなんとか仕事をこなして、一日のタスクは完了させた。文句ばかり言う女子たちは積み上がったファイルを半分ほど片付け、逃げるように帰っていった。少しだけ仕事が減った穂村と言えば、ほぼほぼ書類が片付いている。 足元にあったファイルもな…

レンアイモヨウ03

 本当に好きになった人はあなた一人だけだ。そんなことをウザいくらいの絡み酒で言っていた。それがいつだったかはもう覚えていないけれど、自分から好きになったのは俺だけだと言われて少し気分が良かった。 誰の手垢もついていないまっさらな感情とあいつ…

レンアイモヨウ02

 いま自分の中にある感情がなにか、それは自覚しているつもりだ。しかしその感情はそれほど珍しいものではない。いままでだって相手に好意を持っていたし、付き合っていればこれは当たり前の感情だろう。 それでもいままでとはどこか違うような気はしている…

レンアイモヨウ01

 幼い頃は人を好きになることに優劣はなく、誰を好きだと言っても周りは子供の戯言くらいの反応だった。そのまま成長をして思春期になった頃も、若気の至り、好奇心によるもの、程度の印象しかなかったのか、自分の性癖を自覚したのは少し遅かった。 人を好…

コイゴコロ05

 腰を動かすたびにギシギシと二人分の重みを載せたベッドが軋む。冷えた空気の中でも汗が滴り肌の上を滑り落ちていく。吐き出す息は熱くて、頬も紅潮して火照っている。 しかしそれ以上に身体が燃えるように熱くて、突き抜けるような快感に腰を振るのをやめ…

コイゴコロ04

 シャワーが流れっぱなしの湯気が立ち上る風呂場で、ねちっこいキスをする。唾液を拭うのも忘れてひたすら舌を絡ませた。身体の熱が高まって、口の中まで溶けそうなくらい熱い。 撫でられるたびにゾクゾクとした痺れが駆け抜けて、だらだらとしずくをこぼし…

コイゴコロ03

 苺のショートケーキを大雑把にフォークで突き合って半分くらい平らげて、スパークリングワインを二人で一本空けた。それほど度数の高いものではなかったので、ほんの少し酔いを感じるくらい。 しかしいい気分で風呂に入ろうと思ったら、長湯はしないように…