しあわせのカタチ

コトノハ/08

 いつもはあまり聞けない、甘い声が耳から浸食してきて、頭が馬鹿になりそうだ。「先輩、好き。ねぇ、ちゃんと聞こえてる? 広海先輩、愛してる」 ベッドに上半身を埋める、彼の背中に俺の汗が滴る。何回イったか、わからないくらいに、俺に啼かされている…

コトノハ/07

 静かな室内で粘る水音と、広海先輩の上擦った声が混じり合う。 相変わらず口を覆っているが、熱い息が指の隙間からこぼれて、かなり限界が近いのがわかる。「可愛い。先輩、めちゃくちゃ可愛い」 すぐにでもイキそうなんだな、というのが手のひらに伝わっ…

コトノハ/06

 駅前でタクシーを拾って、広海先輩を押し込んだ。嫌そうな顔はしていたけれど、気が引ける部分があるのか、大人しかった。 そこにつけ込む俺は、なかなかに最低な気がする。だとしても早く、二人っきりになりたかった。「お前、明日は朝早いんじゃなかった…

コトノハ/05

 ものすごくなにか言いたげな目で、見つめられている。それでもようやく、追いかけてきてくれたのかと思えば、嬉しさが湧く。 だが咎めるみたいな目で見られる、理由はさっぱりわからなかった。「なんで広海先輩が怒ってるんですか?」「それは、お前が」「…

コトノハ/04

 思いがけない展開に、身動きできず立ち尽くしてしまう。 それなのに恋人は、こちらの反応に慌てる素振りもなく、なんらいつもと変わらない顔をしている。 ものごとを誤魔化したりしない人だから、やましいことは一つもないってこと、なのだろう。 だとし…

コトノハ/03

 抵抗しようとする身体を押さえつけ、口の中をたっぷりと荒らす。すると鼻先から、小さな声が漏れ聞こえてきて、たまらなく興奮を煽られた。 口づけの合間に彼を見つめれば、ほんのわずか、潤んだ瞳に見上げられる。「広海先輩、すごく可愛い」 愛おしさが…

コトノハ/02

 なんとか駅に着く前に追いついて、一緒に改札を抜けた。そのまま逃げられたら、と思っていたのは杞憂だったようだ。 言わなくとも、黙って公園へ向かう電車に乗り込む。 二人並んで吊革を掴んでいると、窓の向こうに桜色の景色が見えた。通勤する時にも見…

コトノハ/01

 初めてあの人が口にした言葉は、ほとんど聞こえないくらいの、小さな小さな告白だった。 正直言えば聞こえなかった、と言うのが本音だが。それでも心に、伝わってくるものがあった。次がなくとも許せてしまうくらい。 そう思っていたのに、なんだか最近の…

角砂糖

 朝、目を覚ましてリビングへ行くと、珈琲の香りが部屋に広がっている。そしてフライパンで油が跳ねる音がして、ベーコンの焦げたいい匂いが漂ってくる。それはほぼ毎日欠かすことがない。ゆっくりと視線をキッチンへ流してみれば、やたらとまっすぐとした広…

二人の距離

※一緒にいるようになって一年くらい―――――― 冷たい冷気を漂わせるアイスが並んだショーケースの前で、じっと立ち止まってもう五分くらい経った。それでも彼はまだ悩むようにじっと見つめている。「先輩、なに悩んでるんですか?」「新作アイス、抹茶と…

レンアイモヨウ07

 お互い真っ正直なんだろうなと思うと、ほんの少し羨ましくもある。自分はひねくれて、素直に心の内側にある気持ちさえ言葉にできない。 それを言葉というカタチにしてしまったら、なにかがガラガラと崩れ落ちていきそうで、隣にある手さえ握れない。 この…

レンアイモヨウ06

 なにか心の隅に残るような、出来事とはなんだろうかと考えてみるが、なにも浮かばなくて次第に考えるのも疲れてくる。 正直言えばもう考えるのもやめたい。いっそこの手に繋いだものを手放したら、楽になれるだろうか、なんてさらにネガティブな考えまで浮…