恋のステップアップは急上昇!

友人たちの嘘

非日常というものは、通り過ぎると夢や幻のように思えてしまう。 現実の慌ただしさに追われているうちに、思いがけずカメラを構えたあの日から、二週間も過ぎていた。 いつもなら少しばかり長く感じる時間が刻刻と過ぎていき、焦りすら覚える。 学校の講義…

綺麗な花嫁さん

 いざ撮影となると、緊張感が増す。授業でスタジオ撮影は経験があり、手順も覚えている。素材はこの上なく良いので、撮る側の腕のみだ。 しかしそれが一番の問題とも言える。「こうちゃんの準備ができたらでいいよ」「は、はい」「カメラの準備って言うより…

お願いのお願い

 引き止められた人は、大きく瞳を開いて幸司を見ている。突然のことに驚いたのだろう。深みのある赤色のルージュで彩られた唇は、言葉を紡げずにいるのか薄く開いたままだ。 その表情にどうしようかと、幸司は逡巡した。しかしここで引き下がっては、せっか…

理想の人に出会いました

 静かな室内―― カサカサと紙をめくる音や、カツカツとペンを滑らせる音が、不自然なほどよく聞こえる。 沈黙の中、緊張で高まった胸の音は、先ほどからドクドクとうるさく響いていた。膝の上で握りしめられた手も、びっしょりと掻いた汗で濡れている。 …