恋のステップアップは急上昇!

恋は急上昇

 年が明けてから、幸司は真澄の住まいに引っ越しをした。 突然のことで、さすがに両親も弟妹も驚いていた。だが珍しく幸司が自分から言い出したことなので、自我の芽生えだと、最終的には手放しで喜ばれた。「真澄、あんまり幸司くんに迷惑をかけたら駄目だ…

二人分の約束

 ベッドが軋む音と、幸司の上擦った甘い声が響く。真澄にしがみついたまま、自ら激しく腰を揺らす姿は、セックスと言うより自慰のように見える。 それでも気持ち良さに飲み込まれた幸司は、自分を止めることができない。「かっわいいな、そんなにいいんだ?…

甘やかな時間

 ベッドへ行く前に、真澄は写真の貼られた壁を隠してくれた。自分に見られているのは、さすがに幸司でも気分が落ち着かない。 だがそれを聞いた彼が、全部剥がすと言い出したので、それだけは慌てて止めた。あの数を剥がしていては朝になる。「こうちゃん、…

求め合う気持ち

 幸司の肩口に顔を埋める真澄の肩が震えている。しばらく黙ったまま抱きしめ続けていると、泣いていると思っていた彼が、小さく笑った気配を感じた。 急な変化に幸司は首をひねるが、覗き込むと彼はぴたりと押し黙る。そして幸司を抱きしめる腕を強くした。…

大切な二文字

 しんとした空間に、幸司の泣き声だけが響いた。泣きすぎて呼吸の仕方もわからなくなり、ひきつけを起こしたみたいに声が震える。 目の前に立つ真澄は、そんな様子を見つめて、ただ立ちすくんでいた。「そんなに泣かないで。なにが駄目なの? なにがおかし…

あいだにある大きなズレ

 駅前でタクシーを拾い、半ば押し込めるように乗せられた。真澄が告げた行き先は、四つほど離れた駅だった。 思っていたよりも、近くに住んでいたことに驚かされる。 さらに言えば、そこは高級住宅地で、地価が高いことでも有名だ。ただの美容師にしては、…

疑惑が広がる

 駅から家までの道を、幸司は息が上がるほどのスピードで走った。いつもは近いと思っていた距離が、今日ばかりはやけに長く感じる。 運動不足のなまった身体ではなおさらだ。 たどり着くなり自分で鍵を開けて、その向こうに飛び込む。 物音に気づいたのだ…

彼の心の中

 自由奔放を絵に描いたような人。それは出会った頃から感じていたので、いまさら驚くべきことではない。 人の話をあまり聞かない、のも昨日今日のことではなかった。 それでも付き合おうの言葉のあとは、歩み寄りを感じていた。 だからこそあの時、なにも…

本当の姿

 しばらくして服を数着、手に戻ってきた真澄は、試着室へと消えた。その前をウロウロしながら、幸司は胸をわくわくとさせる。 いつもの可愛らしさからいくと、男装するといったイメージだが、彼の男らしい一面も知っているので、期待が湧く。「いままで可愛…

見え隠れする過去

 撮影が終わったあとは、小道具の花をコンビニで学校へ送り、昼食を済ませて解散となった。 真澄はデートをしようと、言ったことを覚えていたようで、二人で繁華街へと移動する。 電車を乗り継ぎ、降り立ったのは、普段あまり縁のないお洒落な街だ。道の端…

純白の天使が舞い降りる

 彼が降り立った瞬間、世界が一変した。 空気が凜として、まるで天使の羽が舞い上がるような、錯覚さえ起こさせる。 降り注ぐ光のすべてが、彼のためにあると言っても、決して間違いではないだろう。 回り階段を下りてきた真澄に、幸司は目を奪われた。純…

小さな幸せを

 今日、幸司が向かう場所は、一軒家を改装した撮影スタジオ。 真澄のつてで、借りることができたそこは、プロも使う本格的なスタジオだ。普通に借りると、学生の幸司では手の届かない金額なのだが、彼のおかげでかなり安くなった。「えっと、あ、ここだ」 …