恋のステップアップは急上昇!

あいだにある大きなズレ

 駅前でタクシーを拾い、半ば押し込めるように乗せられた。真澄が告げた行き先は、四つほど離れた駅だった。 思っていたよりも、近くに住んでいたことに驚かされる。 さらに言えば、そこは高級住宅地で、地価が高いことでも有名だ。ただの美容師にしては、…

疑惑が広がる

 駅から家までの道を、幸司は息が上がるほどのスピードで走った。いつもは近いと思っていた距離が、今日ばかりはやけに長く感じる。 運動不足のなまった身体ではなおさらだ。 たどり着くなり自分で鍵を開けて、その向こうに飛び込む。 物音に気づいたのだ…

彼の心の中

 自由奔放を絵に描いたような人。それは出会った頃から感じていたので、いまさら驚くべきことではない。 人の話をあまり聞かない、のも昨日今日のことではなかった。 それでも付き合おうの言葉のあとは、歩み寄りを感じていた。 だからこそあの時、なにも…

本当の姿

 しばらくして服を数着、手に戻ってきた真澄は、試着室へと消えた。その前をウロウロしながら、幸司は胸をわくわくとさせる。 いつもの可愛らしさからいくと、男装するといったイメージだが、彼の男らしい一面も知っているので、期待が湧く。「いままで可愛…

見え隠れする過去

 撮影が終わったあとは、小道具の花をコンビニで学校へ送り、昼食を済ませて解散となった。 真澄はデートをしようと、言ったことを覚えていたようで、二人で繁華街へと移動する。 電車を乗り継ぎ、降り立ったのは、普段あまり縁のないお洒落な街だ。道の端…