移り恋

一歩前ヘススム08

 その夜は淳が満足するまで身体を繋げて、ベッドに転がった頃に腹を空かせて起きた。 体力勝負、みたいなところは男同士ならではな気がする。 腹を満たしてもう一度風呂に入って、深夜と呼ばれる時間にまたベッドに潜り込んだ。 さすがに疲れたのか、二人…

一歩前ヘススム07

 あのあとの淳はすっかりのぼせて、意識を飛ばしてしまった。それにはさすがに雅之も驚いたが、あまりにも満足そうな顔をしているので、可愛いという感情しか湧かなかった。 ただほぼ身長や体格の変わらない成人男性を運ぶのは、骨が折れる。意識がない時の…

一歩前ヘススム06

 思いがけず玄関先でたっぷりと彼を堪能してしまい、そのあと慌てて食料と飲み物を冷蔵庫へしまった。これを出すのは、きっと夜が更けてからになりそうだと思いながら。「お湯が溜まるまでに身体を洗っちゃおう」「あ、はい。……んっ」 雅之が浴室を覗くと…

一歩前ヘススム05

 夕刻を過ぎ、夜の時間帯になってしまったが、二人の時間はこれから始まる。明日のお昼まで希を預かってもらえるので、それまではフリータイムだ。 せっかくだから美味しい店でディナーを――そう雅之は考えていたけれど、今日は家でゆっくり過ごしたい、と…

一歩前ヘススム04

 今日は朝から晴れ間が広がり、お出かけ日和。動物園は家族連れで賑わっていて、お目当てのサンドイッチは、あとわずかだった。 新発売の動物のイラストが入った、ペットボトルも購入して、先に園内を歩いている希と淳を追いかける。 どこへ行ってもゆっく…

一歩前ヘススム03

 眠りから意識が浮上すると、すーすーと穏やかな寝息が聞こえてきた。それにまだ重たいまぶたを持ち上げれば、胸元に希がぴったりとくっついて眠っている。 さらに視線を動かした先には、あどけない顔で眠る淳の姿があった。 いつもこのパターンだな――そ…

一歩前ヘススム02

 知らぬ間に筒抜けになっていた。それにはひどく驚いたものの、義昭が好意的であったので、早い段階で知られたのはかえって良かったのではと思えた。 こそこそと付き合っていくのは、やはり限界がある。 男としても歳の離れた恋人に大して、責任は持つべき…

一歩前ヘススム01

 春はなにかと忙しい季節だ。年度が替わって社内も慌ただしくなるし、不慣れな新入社員たちがあれこれと問題を持ち込んで、そのフォローにも追われる。 しかしいまの部署に異動して三年目の雅之には、もうすっかり慣れた業務だった。「すみません。社員証に…

移り恋03

 軟膏を塗りたくり、何度も蕾を指先で撫でほぐしていくと、次第に焦れてきたのか、淳の腰がいやらしく揺らめく。 それでも丹念にそこを優しく開いていくと、入り口のあたりや奥を指先で触れるたびに、涙を目尻に溜めながら小さな声を漏らして喘ぎ出した。「…

移り恋02

 希をあいだに挟み、まるで親子のように小さな手を繋いで、家路につく。 さらに三十分ほどかけて家に帰り着くと、キッチンに立った淳が雅之と希のために晩御飯を作ってくれる。 これは高遠家では最近よく見る光景だ。 淳は園長の手伝いをしているため、就…