ああ、光喜のせいで視線をものすごく感じる。黙って立っているだけでもこの男は目立つ。それなのに俺みたいなのにひっついて手を繋いでるんだから、好奇の眼差しがグサグサと刺さる。
けれどうな垂れて下を向いていたら、ふいに鶴橋が俺の腕を引いた。光喜から引き離すかのようなその手に、思わず顔を見上げてしまう。
「光喜さん、こういう場では控えるのが優しさだと思いますが」
至極真面目な声。光喜に向ける目は真剣で、もしかしたら少し怒っている? いままで見たことのないきつい視線を光喜に向けている。その視線に光喜は目を瞬かせていたが、しばらくすると肩をすくめて俺の手を離した。
しかし手を離されたのはいいが、牽制し合うように顔を見合わせる二人にまた居心地が悪くなる。やめてくれ、これ以上目立たないで欲しい。頼むから俺に安息をくれ。
「二人とも、自分たちの見た目を自覚してくれない? じゃないと俺は帰るよ」
「勝利はこの人に迷惑してるんじゃなかったの?」
「そうだけど、いまはお前にも迷惑してるぞ。無駄にキラキラしてんだから大人しくしてろよ」
納得がいかないと顔に書いている光喜の額を手のひらで叩く。するとますます頬を膨らませて不服そうな顔をした。その顔に俺は盛大なため息を吐き出す。
「いいか、いまどき幾分寛容になってはいるけど、俺みたいな人種はまだまだ日陰者なんだよ。お前の普段の感覚で来られると迷惑だ」
この男は付き合った相手とイチャイチャするのが好きだ。それはもう鬱陶しいくらいにベタベタするんだ。だから誰と付き合ってるのか一目瞭然なくらい。
しかし「ふり」をするだけの俺にまでそうするとは思わなかった。これはちょっと誤算だ。
「そっか。勝利が困るって言うなら気をつけるよ」
「お、おう。そうしてくれ」
なんだかやけに素直で気持ちが悪い。けれどそれっぽく見せるにはいい反応だ。とは言えそのたびに顔をしかめられるのは気になってしまう。本当にこれで鶴橋は諦めてくれるんだろうか。
歴代彼氏を知ってることといい、俺を見ていたのは数ヶ月そこらではないだろう。想像だけど、もしかしたらアパートに越してきた頃から見られていたかもしれない。
あの時、声をかけてきっかけを作ってしまったってことだよな。自分で墓穴を掘ったのか俺は!
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