鶴橋も光喜も友達と言うにはちょっと語弊がある。まあ言うならば恋人候補な訳だから。だけどそれをはっきりと認めてしまうのはなんだかむず痒い。まだ二人と付き合うと考えるには迷いがあった。しかし二人とも悪いところがないのが困る。
光喜は元からよく知っているが、十二年以上も付き合いがあるだけあっていいやつなのはわかっている。なんだかんだと親身になって話を聞いてくれるし、気のいいやつなんだほんと。男前で腹立つことも多いけど。
鶴橋もストーカーっぽいところが大いにあるものの、害がある一途さではないから話してみるとかなりまともで、普通の人だというのがわかる。
「笠原さん、お疲れさまです」
そして本当にまっすぐに俺しか見ていないのもすごく感じる。
「あ、お疲れ。はい、いつもの煙草」
いつものようにコンビニにやって来て惣菜パンとミルクティーをレジに持ってきた鶴橋はやんわりと微笑む。その顔にちょっとばかり戸惑いながら煙草を差し出した。どう反応していいのかまだ迷うんだよな。
「ありがとうございます」
「ずっと気になってたんだけど、週三も同じもので飽きないの?」
「疲れている時は甘いものが欲しいですし、この明太子パンおいしいですよ」
「絶対それ煙草吸って誤魔化してる気がする」
「あはは、確かにそれもあるかもしれません」
週に三日コンビニにやってくるけれど、来る時間がいつも結構遅いんだよな。この三日が特別遅いのか、それともほかの日がもっと遅いのか。だけど疲れてよれてる感じはまったくない。いつもキリッとしてる。
「朝は卵かけご飯とかふりかけご飯って感じがしてきた」
「……よくわかりますね」
「鶴橋さん、オンとオフのギャップすごいし」
「スイッチが切れると駄目なんですよね」
あれから朝ゴミ捨てに出た時とかにも会ったけど、本当に寝起きは残念なくらいボサボサ。あれでは昼間に会っている人はわからないと思う。
「でも笠原さんが嫌なら気をつけます」
「えっ? あ、いやいいよ。家の中でまで気を使うのしんどいだろ」
「んー、まあ、長く続かないんですよね」
あ、これは付き合いたては気を使うけど徐々にぼろが出て振られるタイプだ。
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