いじらしい言葉に少し胸がときめいてしまう

 黙ってるとかなり男前だし、頭良さそうに見えるし、仕事とかもバリバリしてそうな印象がある。予想に違わずモテるんだろうなと思う。いままで付き合った人どのくらいいるんだろう。綺麗系? 可愛い系? どっちでも似合いそうだな。

「笠原さん? なにか顔についてます?」

「え? あっ! いや、いままでの彼女は美人なのかな、って、なんでもない!」

 どうやら袋詰めしながら固まっていたようだ。慌てて袋を差し向けるが、なにかいま余計なこと言った気がする。目を瞬かせた鶴橋の顔がなんだかちょっと嬉しそうだ。

「特別綺麗な子はいませんでした。普通の子です。笠原さんこそ、可愛らしい子ばかりでしたよね」

「うっ、あ、まあ」

 しまった。この人、俺の歴代彼氏を知っているんだった。自分の好みを知られるのってかなり恥ずかしいかも。ほんと俺は好みが偏ってるから、みんな似たタイプなんだよな。一緒にいるだけで――ああ、あの子と付き合ってるんだって思われていたに違いない。

「それ知ってから自分の容姿を恨めしく思ったこともありますね」

「なに言ってんだよ! これだけ顔が整ってるの羨ましい限りだって」

「そうですかね。笠原さんの言うようにオンとオフが酷すぎてかなりあ然とされるんですけどね」

「んー、まあなぁ。夢見てる乙女には厳しいかな」

「……ですよね」

 これはかなり酷い振られ方をした経験ありだな。肩を落として重たい息を吐く鶴橋はだいぶ気落ちしている。乾いた笑いを返せばちらりと視線を持ち上げて窺うような目を向けてきた。

「笠原さんは、どう思いますか?」

「え? 俺? まあ、確かにあれは酷いけど」

 髪はボサボサだし無精ひげ生え放題だし、スウェットは伸びきってるし、他人の目を気にしてなさ過ぎって思うんだが、それも家にいるプライベートの時間だけな訳だしな。家にいる時まで気にする必要はないとも思う。

「寝癖つきやすいのはどうしようもないし、ひげなんて勝手に生えてくるんだから仕方ないよな。まあ、ギャップがあるほうが可愛くていいんじゃない?」

「そんなこと言ってくれたの笠原さんだけです。でも身繕いはもうちょっと気を使いますね」

 それは俺のために気を使ってくれるということだろうか。なんかいじらしくていい。