決別17
藤堂に触れられると幸せだしドキドキもする。でもそれと同じように藤堂もそう思っているなんてことは、実際のところあまりよく考えていなかった。 それにそういう意味で僕に触れたいと考えているなんてことは、なに気なく傍にい過ぎて、それだけで満たされ…
はじまりの恋はじまりの恋
決別16
押し倒されているような状態にめまいがする。けれどしがみつくようにぎゅっと掴まれると、無理に引き離す気も起きず、なだめるように彼の背を優しく何度も叩いてあげた。胸元に頬を擦り付けて甘える仕草をする彼が本当に愛おしい。でも愛しいからこそ簡単な…
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決別15
正直言ってそこはかとなく漂う色気に、気の迷いを起こしそうなほどの雰囲気はある。しかしだからと言って意識もなく、酔っ払って明日には記憶すらもないだろうと思われる相手を、いまどうにかしようという気持ちにはなれない。 確かにその瞬間はいいかもし…
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決別14
酔っ払ってなにを話したのかわからないが、見知らぬ人間に気安く名前を呼ばれることがこんなに腹立たしいことだとは思わなかった。 ふらついて歩く彼の腰を抱き寄せて、いまここでこのどうしようもない馬鹿な人にキスをかましてやりたくなる。もちろんそん…
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決別13
こうなることは予想出来ていたのだから、もう失敗したとか、馬鹿なことをやってしまったとか、なにもかも後悔してもどうにもならない。逆を言えば、あのまま逃げ出そうとしたあの人を、無理やりに引き止めて押し倒さなかっただけ偉いと自分を褒めたい。はっ…
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決別12
今日、何度目かわからないその表情に、僕は藤堂のあとで、という言葉を思い出した。「藤堂、あとでって言ってた話を聞いてもいいか?」 藤堂の顔色を窺いながら、そろりと四つん這いで近づいていったら、一瞬だけ藤堂がびくりと肩を跳ね上げた。その反応に…
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決別11
藤堂と外でのんびりと食事をするのは随分と久しぶりだ。それこそ初めて出かけた時以来だろうか。 動物園へ出かけた時もなんだかんだと色々あって、二人きりにはほど遠い感じになってしまったし、実家に行ったから食事もみんなで済ませた。藤堂が喜んでいた…
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決別10
これも普段はしない仕草だ。でも口調は既に元通りになってしまった。いつもの藤堂と少し大人びた目をする藤堂。二つの顔に僕は思わず首を傾げてしまった。「藤堂は僕に気を遣ってるのか?」「え? どういう意味ですか」「いや、口調が違うから。やっぱり歳…
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決別09
バスに揺られて少し移動した先にある広い霊園は、郊外と言うこともありとても静かだ。 優しい風に吹かれてさわさわと揺れる木の枝と木の葉。その下では綺麗に整備された石畳が長く続く。久しぶりに来たこの場所は当たり前だがなにも変わらなくて、あれから…
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決別08
嫌ではないと言ってくれた藤堂の気持ちに嘘はないと思う。僕を見る目はまっすぐで淀みもない。けれど僕はいつでも藤堂の優しさに甘えているのかもしれないと、改めて実感してしまった。「藤堂の気持ちは信じてるけど、本当に嫌なことは嫌って言えよ。じゃな…
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決別07
とりあえずよくわからないまま機嫌を損ねたり、怒らせたりするのは嫌なので、しばらく言われたとおりに大人しく黙って藤堂の横にいることにした。しかし電車に乗ってるあいだも終始無言が続き、新幹線に乗り換えする時に二言三言交わした程度で、あれからず…
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決別06
思いつきで色々と決めてしまったが、少しの迷いはあったりする。ただ傍にいたいという気持ちが強くて、もちろんそれだけではないけれど。考えてみたらかなり自分勝手なことに付き合わせるんじゃないかと不安にもなった。 しかしあれから何度となくことの真…
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