第5話 なぜそうなった?
日差しで焦げるか溶けるか、と思うほどであった、暑さが和らぎ始めた頃。これからは自分と、と言っていた希壱とは月に数回、会うようになっていた。 大抵が飲みか食事だが、時間があるときは映画に行ったり、買い物をしたり。友人らしい付き合いである。 …
眠り姫は黒猫な王子のキスで目覚める長編
第4話 予想どおりの展開すぎる
偶然とは言え、希壱と二人きりで会ったのだからこうなると、一真は最初から想像がついていた。 あの日からしばらく、希壱の兄である三島弥彦と、姉である|時《とき》|沢《さわ》あずみに呼び出された。面倒くさいと思いつつも、予想どおりなので、避けら…
眠り姫は黒猫な王子のキスで目覚める長編
第3話 なぜだか懐かれた
「好きなもの、飲んで食べていいぞ」 希壱の最寄り駅で降りて、馴染みのある居酒屋に入った。邪魔をしてしまった詫びをしようと、一真は最初からおごると決めていた。 それを聞いた希壱は初めこそ遠慮をしたが、席に着く頃には一真の言葉を受け入れて、楽し…
眠り姫は黒猫な王子のキスで目覚める長編
第2話 夏のはじまりと再会
ミサキと初めて会ったのは、一真が高校生の頃だった。そこから付き合いが十年以上も続くと、知られていることも多い。 元カノ、元彼、フラれた相手まで。「相変わらず繁盛しているな」 とりあえず話を変えようと、一真は視線をほかの場所へ移す。 店は大…
眠り姫は黒猫な王子のキスで目覚める長編
第1話 浮かれない夏
すっかり日が暮れた週末の夜。 バスの窓から見える大通りは、いつもと雰囲気が違って見えた。 夜の明かりに変わった街中は、仕事終わりの勤め人が多く歩いている。しかしそれ以上に駅や繁華街へ向かい歩く、プライベートを過ごす人たちの姿が目に留まった…
眠り姫は黒猫な王子のキスで目覚める長編
終章~約束を再び、いま
翌朝、早い時間に二人で湯浴みをしていたら、デイルが侍女長に怒られた。 本日は建国祭の翌日なので、特別な予定はないものの、家族で食事の約束をしていたのだ。 用意していた衣装では首の痕が隠しきれないと、次からはもっと気をつけるように、とお叱り…
死に戻りの皇子は魔法使いの献身でいまを生きる長編
二人の体温が混ざり合う
熱のこもった口づけを受け入れながら、興奮の色を見せるデイルの瞳にユーリは見惚れる。 少し前の急いた感じが戻ってきたのだろうか。 デイルの愛撫が衝動的になってきた。しかし逆に求められている感じがして、ユーリは気分が良くなる。 二人で息を乱し…
死に戻りの皇子は魔法使いの献身でいまを生きる長編
かすかに響く息づかい
二人きりの空間では二人の息づかいだけが響いている。 思う存分口づけ合い、抱きしめ合う。もどかしく思いながら衣服を脱ぎ去る頃には、ユーリはもう待ち遠しくてたまらなくなっていた。「美しい肌ですね」「んっ」 さらけ出された、ユーリの胸元に口づけ…
死に戻りの皇子は魔法使いの献身でいまを生きる長編
素っ気なかった理由
離宮へ戻ってもユーリはデイルにしがみつき、ひとときも離れなかった。 従者たちは二人に気を使って下がってくれ、いまはデイルが冷たい布をまぶたに当ててくれている。泣きすぎて赤く腫れているらしい。「大丈夫ですか?」「ディーが口づけてくれたら、大…
死に戻りの皇子は魔法使いの献身でいまを生きる長編
皇室主催のお茶会にて
建国祭は滞りなく行われた。 シリウスの治世はルカリオとはまた違った柔軟性があり、民たちからの評判も上々だ。 ルカリオは帝位から一線を引いているけれど、若い皇帝の相談役として宮殿に残っている。彼の人気も衰えてはいない。 二人がバルコニーから…
死に戻りの皇子は魔法使いの献身でいまを生きる長編
帝都へ向かう道
デイルが公爵領の騎士として仕事を始めて数ヶ月ほど経ち、気づけば建国祭が近づいていた。 二人の記憶に残る運命の日だ。 今回はユーリが祝う立場なので、帝都へ向かうこととなった。 公爵領から帝都までは視察で旅した時は距離を感じたが、今回はのんび…
死に戻りの皇子は魔法使いの献身でいまを生きる長編
同じ時を生きる
宮殿に戻り、ミハエルの死去を伝えるとルカリオは痛ましげに顔をしかめた。 たとえ国に災いを為すため暗躍していたとしても、大切に思っていた弟の死だ。 心に様々な感情が溢れていただろう。 ミハエルに手をかけたデイルは、一向に目覚めないので、誰し…
死に戻りの皇子は魔法使いの献身でいまを生きる長編