すべての終わり
ユーリがデイルの治療を行っているあいだ、ミハエルはなにも仕掛けてこなかった。 無駄な真似をしていると呆れているのか。「お願いだ。ディー、僕を置いていかないで」 槍はわずかにデイルの心臓をそれていた。けれどすでに脈はない。 傷を塞いだだけで…
死に戻りの皇子は魔法使いの献身でいまを生きる長編
判断を誤った代償
ミハエルの結界を打ち壊したデイルの魔力は鞭のように、しなやかに伸び、暗色の剣に絡まる。 輝きを放つ魔力でできた鞭はどんどんと、ミハエルの魔力を浄化して言っているように見えた。 ミハエルの持つ剣は姿を崩し始める。(あの禍々しい剣、嫌な感じが…
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花咲く場所へ
調査員がミハエルを見かけたという場所は、フィズネス領とユーリアの墓所の境目だったという。 周囲は毒も拡がっておらず、危険はないけれど、さすがにユーリ一人で行くのは無謀すぎるので、デイルが同行することとなった。 しかし同行者がデイルで大丈夫…
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調査と計画が進行中
皇帝ルカリオと通信鏡で話をし、大魔法陣で土地の浄化を行う計画を進めることになった。 今回はすぐさま動ける内容ではないため、いまごろ宮殿では人選や人員の確保、どのように土地の浄化を行うかなどが話し合われているだろう。 ユーリたちのほうでも、…
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これからすべきことは
村を出たあとは茶を淹れてくれたゼノアと、白い大鳥が先導し、村と外の境界部分まで案内をしてくれた。 どうやらデイルを迎えに来たのも彼なのだとか。二十代半ばほどの若々しい青年、といった見た目だけれど――〝数百年生きている〟長老のひ孫らしい。 …
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帝国建国の秘話
初代皇帝が八番目の王子であったと言う史実は本当だった。 ドラゴンが彼に地を貸し与え、帝国の地を治めていけるよう、魔力も貸し与えた。 ただし、ドラゴンは友であった少女の願いを聞き、皇帝となった八番目の王子――ディアランに、力を与えたのが真実…
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神を祀る村
声の主は先ほど水を持ってきてくれた少年――タムだった。 ユーリもデイルも部屋に扉がないのを、うっかり失念していた。 声が気になって覗いたら、ベッドで二人――なんて場面、少年には刺激が強かっただろう。 慌ててユーリたちが身を起こすと、彼は後…
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いざ幻の村へ
ホートラッド山までの道のりは、決して険しいものではなかった。しかし護衛がデイル一人になったので、負担をかけまいとユーリは気を張ってしまったようだ。 山の麓の森に着く頃、疲れが出たのかここに来て熱を出した。「ユーリさま、ご気分は? 体は痛く…
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二人の旅の行く先
ユーリたちは翌日、朝から町――パトルの治療院などを回って歩いた。 解毒薬は想定より多く持ち運んでいる。しかし帝都から離れた場所であるはずなのに、患者の数が思ったよりも多く、気にかかった。 話を聞くと最近、山のほうから、川の水と一緒に土砂が…
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幻と夢の残滓
気づくとユーリは魔法局の裏側にあった、小さな秘密の空間にいた。 うっかり迷い込まなければ見つからないだろう場所。 椅子に座っているユーリの隣には長い黒髪の彼がいる。少しくせ毛で、手入れをきちんとしないから、いつも所々跳ねていた。『ユーリ?…
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心によぎる面影
解毒薬の試作から、完成品が出来上がるまでは思った以上に早かった。ユーリたちがどこから回っていくか、情報の整理をしている数日のあいだ。 製薬をするために使う材料や魔道具の動力――魔力――を四人も助力したが、予想以上の速さで頭の下がる思いがす…
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父との初めての対話
森からクトウの宿へ戻ると、ユーリはライが魔法局員から借りてくれた通信鏡で、皇帝ルカリオと会話の場を設けることになった。 いまは念のため部屋の外から、デイルが防音魔法をかけてくれている。「僕が通信鏡を使えるようになるなんて、思わなかった」 …
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