第18話 心にある本当の気持ち
王弟としてのリューウェイクを支援する貴族は、数える程度しかいないものの、第三騎士団の副団長としては一目置かれている。 いくら女神の加護で戦争がなく、魔物の数が過去に比べて多くないとはいえ、近隣国に迫られるのも魔物に脅かされるのも恐怖だから…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第17話 絢爛な離宮
外も内も、華やかな魔力灯で彩られた離宮は、さすがに王家の祝賀会として贅を凝らしているだけあり、美しくとても煌びやかだ。 二人よりも先に、会場である離宮に着いたリューウェイクは、控えの間へゆっくりとした足取りで歩く。 できるだけあの場にいる…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第16話 向けられるその感情は
夕刻が近づき、続々と王城へ馬車が向かってくる様子が、部屋の窓から見下ろせる。 階級の低い貴族たちから大ホール――会場である離宮――に入場するが、王族の出番は最後なので、普段のリューウェイクはギリギリまで私室で時間を潰す。 兄夫妻やほかの親…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第15話 舞踏会の準備
あれから桜花の作った強力な浄化石で、正気を取り戻した聖獣は、もう暴れはしないと約束してくれた。 とはいえ女神の憂いがさらに深まれば、大地にまで影響を及ぼす可能性があるだろう、と忠告もされた。 回避するためにどうすべきなのか。 リューウェイ…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第14話 白き獣の咆哮
駆け込んできた偵察隊の背後から、気圧されるほどの魔力の圧を感じ、無意識のうちに皆、足がじりじりと後退する。「本体の姿は見えたか?」「……あ、あれは、おそらく。……聖獣さま、です」「は?」 顔を青くした、団員の思わぬ返答に、さすがのリューウ…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第13話 部隊、祠へ出発
翌朝、日が昇りきる前に編成部隊は整列し、出立の準備が整った。 森から感じる空気に禍々しさは感じないものの、異様な静けさは続いている。 団員たちは雪兎からの申し出で、各々が持つお守りなどに彼からの祝福を与えられた。 王城内の噂では聖女と違い…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第12話 月明かりの夜
翌日の予定と現在の状況を全員に周知し、討伐に編成された団員たちは体を休めるため、食事を済ませると早々に天幕に下がった。 明日は野営地に救護班と遊撃隊が幾人か残る。 いざという時に動ける者を残して置く必要があり、交代で見張りもする。 すっか…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第11話 夏の討伐遠征
第三騎士団の遠征は年に四度行われる。 魔物の討伐を目的としているが、近年は狂暴化して民に被害が出るほど、彼らの動きは活発ではない。 それでも欠かさず行うのは、いまほど国全体が平定されていない頃に、定例化された季節行事だからだ。 昔は人と同…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第10話 聖女からの忠告
異世界からやって来た二人は、深い慣れ合いはしないけれど、環境には随分馴染んでいるようだった。 元より、順応力の高さは初日から発揮されていたので、当然の結果でもある。 聖女として神殿に敬われている桜花は、人心を操るのが上手い。 教祖化が起き…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第09話 異世界へのいざない
日が傾き始める頃までバザールを楽しんで、そろそろ城へ戻らなくてはならない時間が近づいた。 雪兎は夕刻にリューウェイクと別れ、部屋へ戻ってしまうと、以降は宮殿内でしか動き回れなくなる。 過ごす時間を不自由に管理しているようで、毎回申し訳なさ…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第08話 思わぬ贈りもの
「ユキさん、買えた?」 買い物を終え、まっすぐとこちらへ向かってくる雪兎へ、リューウェイクが声をかけると、彼は至極満足そうな笑みを浮かべる。「ああ、買えた。こっちの果物は向こうと呼び名は違うけど似たものが多いな」 厚手の紙でできたトレイに二…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編
第07話 二人で城下町散策
驚くべき騒動――それは雪兎が鍛錬場の見学を始めて、しばらく経った頃だ。 手合わせがしたいと言い出した彼に、リューウェイクが木剣の扱いを教え、見習い騎士に相手をお願いしたのが発端だった。 初めは軽く打ち合うだけだったはずなのに、要領を覚えた…
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる長編