中編

甘やかな花の香りには抗えない

 三十路にもなって純情かよ、と突っ込みたくなるが、デカい見た目に反した小動物みたいな心臓なんだろう。あたふたとしている姿は実に微笑ましい。こういうタイプって母性本能くすぐられる感じだろうな。 ずるずるとうどんを啜りながら、まだ耳まで赤くして…

花を咲かせるためのポイントは

 光喜が寝ているのをいいことに、小津には光喜攻略ポイントを教えた。テーブルを挟んだ向かい側で、床に胡座をかいてこちらを見る顔は真剣そのもの。 しかしそんなに難しいことではない。簡単に言うと飴と鞭の使い方。光喜は甘やかされるのが好きだから性質…

緩やかに咲き誇る気持ち

 近づいた視線をまっすぐに見つめれば、唇が笑みをかたどる。ゆっくりと引き寄せて、目いっぱい抱きしめると冬悟は小さく笑った。伸ばされた腕に抱き込まれて、身体をさらに引き寄せたら二人でもつれるように転がってしまう。「笠原さん、ビール零しますよ」…

花のほころびはもう少し?

 早く光喜に新しい恋をしてもらって、落ち着いて欲しいという気持ちが一番だが、なによりも俺自身がもうちょっとゆっくり二人っきりで過ごしたいと思っている。光喜はしょっちゅう遊びに来るし、それに加えて小津もやってくるようになった。四人で集まるのは…

花が開くかどうかはこれから次第

 少しずつ近づいていけば数センチ、あと数ミリというところでクッションを顔に押しつけられる。目いっぱい押しつけられたそれを避けると、その下で光喜が顔を真っ赤にしていた。「ばーか、冗談に決まってんだろ」「し、心臓に悪い冗談」「なんだよキスくらい…

春爛漫!新しいはじまりの日

 コンビニで出会った頃はまだ寒くて冬を感じていたけれど、いつの間にか花が芽吹いて桜色の春になっていた。春は様々なはじまりの季節でもあり、俺たちにも新しいはじまりはやって来る。 三軒隣、すぐ傍で暮らしていたが、平日も休日も互いの家に入り浸るこ…

これから二人で始める新しい恋

 これまでの一週間を振り返ると短くも長くもある。体感的にはすごく長い。だけど気持ちが変わるのはこれまでで一番早い。こんなに押しに弱かったなんて、やっぱり顔がいいって特だなと思う。 元々可愛い子が好きなだけあって俺は面食いだから、顔のいいやつ…

自分の選択が間違いじゃないって思う瞬間

 ちょっと甘えた考えをしているのは自覚がある。だけど放っておけるほど光喜とは浅い関係じゃない。前向きに次の恋愛が出来るまで、見守ってもいいよな?「あのさ」「笠原さん」「な、なに?」 窺うような視線を向けると、目の前の鶴橋はやんわりと微笑んだ…