身体の熱※

 ベッドに腰を下ろして、目の前にいるリュウが着ているシャツのボタンを、一つずつ外していった。彼の肌に触れるたびに、ドキドキと胸が高鳴っていく。

 デニムのボタンに手をかけ、ゆっくりとファスナーを引き下ろすと、彼の熱は下着にその形を浮かび上がらせるほど、張り詰めている。

 自分に欲情しているのだと思えば、そこには喜びしかない。うっとりと目を細めて、取り出したそれを両手で撫でる。
 顔を近づけて舌を這わせると、雄の匂いが立ちこめて誘われるように、しゃぶりついてしまった。

 咥えたリュウの熱は、喉の奥まで飲み込んでも、すべては口に収まらないほどに大きい。含みきれない場所は両手で扱き、口内では舌や喉を使って刺激していく。
 どんどんと筋を浮き立て、張り詰めてくるそれは次第に、口に含むのも辛くなってくる。

 それでもじゅぶじゅぶと、音を立てすすりながら、たっぷりと愛撫を繰り返した。頭上からリュウの漏らす熱い吐息が聞こえてくるたび、興奮してしまう。
 彼は雁首をいじられるのが好きなのか、唇や舌で撫で回せば、こすりつけるようにしてくる。

 鈴口を舌先でくすぐりながら、あふれ出すカウパーを絡め取るように、ねっとりと舐め上げた。

「宏武」

 こちらへ向かい、伸ばされた彼の手が長い前髪をかき上げ、そのまま髪を梳くように後ろへと流れていく。
 その手は束ねていた髪を解いた。さらさらとこぼれ落ちた、真っ黒な髪が頬にかかり、思わず自分は目をすがめてしまう。

Tu es beau(テュ エ ボー)

 髪や頬を撫でながら、リュウはうっとりとそう呟く。その言葉は前にも一度、聞いたことがある気がする。
 初めて彼と肌を重ねた時に囁かれた言葉だ。視線を上げて彼を見つめると、彼は解けた髪をすくい上げて、今度は自分にも伝わるように言葉を換えて囁いた。

「あなたは綺麗な人だ」

 熱を孕んだ茶水晶の瞳に見つめられ、まっすぐと告げられた言葉に頬が熱くなる。
 そんな言葉はいままで言われたことがない。気恥ずかしくて目を伏せると、口に含んだ熱がどくりと脈打った。

 リュウは驚く自分の口からそれを引き抜いて、目の前でそそり立った熱を扱いていく。それと共に顔に生温かいしぶきがかかり、あまりに突然のことで思わず固まってしまった。

 瞬きを忘れたまま彼を見つめていると、サイドテーブルから引き寄せたティッシュで、飛び散ったものを拭ってくれる。

「ごめん宏武。綺麗過ぎて汚したくなった」

 唇に口づけられて、ようやく我に返ったけれど、すぐに身体を押し倒され再び口を塞がれた。触れるだけではないそのキスは、興奮で火照った身体をしびれさせる。
 リュウの昂ぶりを見て、自分もかなり張り詰めた状態になっていた。刺激が欲しくて自然と腰が揺らめく。

「リュウ」

 請うような視線を向ける自分を、彼は目を細めて見下ろす。口の端を持ち上げて笑う、その表情はいやらしくて、それだけでゾクゾクとした快感を呼ぶ。
 堪らず自身の太ももをこすり合わせて、自分の熱を刺激してしまった。けれどすぐに足のあいだに身体を割り込まれる。

「宏武、いやらしくて可愛い」

「あっ……んっ」

 舌で唇を湿らせたリュウは、刺激を待ち望む中心を大きなその手できつく握った。さらにはそれを、乱暴なくらい激しく扱く。
 思わず声を漏らせば、それを煽るように手の動きも荒々しくなっていく。

 スラックスと、下着の下に押し込められている熱が、ぐずぐずとそれを汚しながら高まっていくのがわかる。

「リュウっ、んっ、や、もうイク、イクから」

 高まった熱はすぐに上り詰める。身体をくねらせて逃げを打つけれど、彼の手は止まるどころかさらに強くなった。
 過ぎるほどの快感に、切羽詰まった声が口先から何度も漏れて、そのたびリュウは目を細め、恍惚とした笑みを浮かべる。

 ゾクゾクとした快感が背中を走り抜ければ、昂ぶった熱が弾けてぐっしょりと下着を濡らしていく。
 まさかそのまま、吐き出すことになるとは思わなかった。

 文句を言いたいのに、上がった息では言葉も出なくて、彼を睨みつけるしかできない。しかしそんな視線など気にもしていないのか、リュウは嬉しそうに笑いながら、口先に口づけてくる。

「……気持ち悪い」

「うん」

 生ぬるく濡れた下着が、肌にまとわりついて落ち着かない。じっと目の前の瞳を見つめれば、彼はいそいそとスラックスに手をかけてくる。
 腰を浮かせて脱がせやすいようにしてやると、一気に下着と一緒に引き下ろされた。

 つま先まですべて脱ぎ去ったら、満足げに目を細められて少し恥ずかしくなる。肌をさらすのは初めてではないのに、その身を両手で抱いて、恥じらうそぶりをしてしまう。
 生娘のように、うぶな反応を示すそんな自分に、なんだかとてもむず痒くなる。

 だがそれがお気に召したのか、リュウは目を輝かせながらゆるりと口の端を持ち上げた。
 雄の色香を放つ彼に見下ろされると、見つめられた先から熱が広がり、身体を侵食されていくような気分になる。

 それと共に、なんだか心が満たされていくような気になった。
 瞳の中に自分が映っているそれだけで、いまは彼の心にいるのは自分だけなのだと、優越感にも浸れる。

 いまだけの夢だとしても構わないのだ。この瞬間をこの胸に思い出として、残しておければいい。

「宏武、愛してる」

 耳元に囁かれる、愛の言葉に胸を切なくさせながらも、腕を伸ばして愛おしい人を抱き寄せる。引き寄せるままに近づいてくるリュウは、優しく唇にキスを落としてくれた。
 唇に触れるぬくもりが嬉しくて、回した腕に力を込める。

 触れるだけだった口づけは、少しずつ深まっていき、お互いの熱い吐息が口先に触れた。
 舌を伸ばして絡め合うと、こすれ合う場所からじわじわと、気持ちよさが込み上がる。

「リュウ、激しく抱いて」

「駄目、今日は優しくしてあげる。目一杯、愛してあげるよ」

 なにも考えられないくらい、めちゃくちゃにして欲しいのに、優しくするなんて残酷ではないか。そんな風に抱かれたら、忘れられなくなる。
 離れた時に一人でいるのが辛くなってしまう。

 それなのにリュウは、壊れ物を扱うみたいに、優しく身体の隅々にまでキスをしていく。
 足の指まで丹念にキスをしていくと、今度は肌を舌で撫で始める。肌をくすぐる舌先に、翻弄されるように身体が跳ね上がり、震えてしまった。

 敏感な場所を撫でられると、口先からは甘えた声が漏れて、もっと刺激が欲しいと、ねだるように腕は彼をかき抱く。

「リュウ、リュウ、いやだ、もっと」

「駄目、もっと可愛い宏武を見せて」

 腰に回された腕で身体を抱き上げられると、ベッドの端から中央へと移動させられる。広いベッドの真ん中で、じれったいほどの愛撫を繰り返されて、声が縋るように涙声になっていく。

 早く反り立った熱で貫いて欲しい。
 なにもかもわからなくなるくらい、揺さぶられてしまいたかった。うわごとみたいに名前を呼ぶけれど、彼の愛撫は止まることなく、肌を羽のように優しく撫でる。

 しかし緩やかな刺激しか与えられないが、身体は徐々に快感を追い上り詰めていた。
 脇腹を撫でられ、胸の先で尖る乳首を舌先で転がされると、上を向いた自分の熱からは、透明なしずくがあふれてくる。

 ぐずぐずに溶かされた身体は火照り、彼が与える小さな刺激さえも快感に変えた。両足をはしたなく開かされると、彼の舌は足の付け根をくすぐり、内腿を撫でていく。
 けれど触れて欲しい熱には、決して触れようとはせず、もどかしさばかりが募っていった。

「リュウ、早く」

 張り詰めた熱にまた激しく触れて、そして早く身体の奥まで暴いて欲しい。後ろの孔はその先を期待して、ひくひくとしている。
 もっと奥まで触れて欲しくて、ねだるように腰を浮かせたら、リュウは目を細めて自分を見下ろす。

 そのまっすぐな視線を受け止めて、頬が熱くなる。だが身体はもっと先の刺激を求めて、貪欲になっていた。両手で尻たぶを掴むと、彼に向けてひくつく孔を向ける。

「中もいじって、もう、我慢できない」

「……宏武、可愛い」

 さらされた孔を、いやらしい雄の目で見つめられるだけで、身体が疼く。指先を孔に這わせて、乾いたそこに指先を押し込める。
 引きつったそこは、指先一つ飲み込むのも辛い。それでも早く欲しくて仕方がないのだ。

「傷つくから、駄目」

 指先で孔をいじっていると、伸びてきた手にそれを止められてしまう。不満げに彼を見上げれば、なだめすかすように膝頭にキスをされた。

「よく見えるようにしていて」

 彼は掴んでいた手を尻にあてがう。
 先ほどのように自分の両手で、孔がよく見えるようにそこを広げて見せれば、彼は満足げな笑みを浮かべて、サイドテーブルの引き出しからローションを取り出した。

「自分でして見せて」

 ローションの蓋を開き、ボトルが傾けられると、たらりと粘度の高い液体がこぼれ落ちてくる。
 ひやりとしたそれが陰部に落ちれば、それは繁みを濡らしながら尻へと伝い落ちていく。それを指先ですくい、言われるがままに自分で孔に塗り込めた。

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