長編

第29話 眠り姫の目覚め

 しばらくしてホールのほうへ戻ると、テーブルの上は誕生日仕様になっていた。 たくさんの料理が並んでいるが、優哉が作ったものと、弥彦の持ち込みもあるようだ。 料理と言えば、この二人だ。 あずみは料理が得意ではなく、主婦になって、いくらかするよ…

第28話 大きなすれ違い

 八月に入り、うだる暑さが続く毎日。 学校は夏休みなので、一真は休みをとって希壱の誕生日に二人でのんびり過ごす――つもりだったのだが。 なぜかお誕生会に様変わりしていた理不尽を、なんと表現しようか。「峰岸の相手が、まさか希壱くんとは思わなか…

第27話 熱いひととき

 自分で中をいじった時はなんとも思わなかった。だというのに希壱が中をまさぐるたび、腰がビクビクと跳ね、震える。 しまいには再び昂ぶりだしたモノを、彼に擦りつけていた。「一真さん。ほんとに可愛い」「――ぁっ」 指が増やされ、質量が増えると少し…

第26話 二人で初めて

 しばらくして寝室を覗くと、ベッドで希壱は寝転がりながら、スマートフォンを見ていた。おそらく色々と予習復習でもしていたのだろう。 そっと近づいて見ると、一真の気配に気づき、希壱はハッと顔を上げた。「忍び足で来ないで!」「なに見てんのかなぁと…

第25話 付き合う記念日

 数種類のケーキを買って、マンションへ帰宅した頃には日が暮れていた。 これから食事の支度をするのは面倒なので、ついでに夕飯も調達してある。 弁当屋の出来合いだけれど、なんであれ味が良ければすべて良し。「はあ、やっぱり家が一番落ち着くな」 荷…

第23話 ありがたいお節介

 誕生日から一ヶ月と少し経ってから、改めて希壱の友人――小淵彬人と顔を合わせる予定が立てられた。 なぜかバーで顔を合わせた、可愛い系男子の夏樹も来ると聞いた時は、一真の頭に疑問符が浮かんだ。 けれど実際に場が整うと、なるほどと納得する。「彬…

第22話 ささやかなお祝い

 五月の終わり頃――本人はまたうっかり忘れてスルーしそうになったが、希壱はどうやら妹から一真の誕生日を聞いたようだ。 数日前に連絡があり、当日の予定を聞かれた。一瞬よくわからなくて間が空いたら、一緒に過ごしたいと言われ、ようやく自分の誕生日…

第21話 初めての××

 これまで一真を抱きたいと言った男は、なにも希壱だけではない。わりと何度も言われた経験がある。 世の中、可愛い男ばかりが人気なわけではない。しかし一真が頷く可能性は万一にもなく。そういった相手とは距離をおいた。 受け手になるのが嫌、という理…

第18話 穏やかな時間

 入院開始、数日は絶食だったが、不思議と食べなければ食べないでいいか、と思ってしまった一真は仕事中毒だと言われた。 普段からそういった生活をしているだろうと、医師に指摘され、言葉に詰まったのは言うまでもない。 そういう人間は、食事よりも余暇…