二人の……事情
下ろされた場所は、至極見覚えのあるベッドの上だった。 今朝ロヴェと目覚めた際、見たばかりなので忘れる間もなかったけれど、自室から一瞬の感覚でリトは状況を理解ができないでいる。 そうこうしているうちに、ロヴェがベッドに乗り上がってきて、まる…
遅咲きの番は孤独な獅子の心を甘く溶かす長編
小さくて大きな悩み
ロヴェによる狩りの詳細は、リトの範疇外なので聞かされなかった。 ただベルイからの提案で婚約が整うまで、外出の禁止になってしまい、許可を得ていた祝祭の参加ができなくなると少し落ち込んだ。 王宮に来てすでに十八日ほどは経ったので、リトは城下へ…
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二人で迎えた朝
温かくて優しい匂いがする夢を見た。 広い草原に立つリトは目の前を転げ回る小さな影を見ており、隣には自分の肩を抱き寄せる大きく頼もしい、そしてなにより美しい人がいる。『――さま!』 清々しい風が吹く中でパッと振り向いた影に、リトは呼ばれたよ…
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未来を決めた瞬間
噂話以外、特段問題も起きず終了した生誕の日だったが、自室で読書をしていたリトは遅くにロヴェに呼び出された。 時刻的におそらく生誕の宴、夜会を終えて戻ったのだろう。 一日、各国から来た来賓の挨拶を受けたり、自国の貴族を相手にしたり神経を使っ…
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生誕の日に下りる影
王宮の敷地で最も城下に近い区画は、大きな行事がある際、門扉を開き一般に開放される。 高い位置にあるバルコニーから、国王陛下のお姿を見られるとあって、予定時刻よりも前に門の前に並び待つ者も多いようだ。 祝いに駆けつけてくれた民たちに怪我をさ…
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獅子の孤独と愛しさ
大事に抱えていた箱をリトが手渡すと、ロヴェは本当に嬉しそうに瞳を輝かせた。 訳を聞けば、私的に誕生日の贈りものをもらった経験がないのだという。 国の大切な後継者として、国王として多くのものを貢がれてきても、その中に真心が込められた品はどれ…
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初めて知った悪意
魔力石作りに没頭しているあいだに、ロヴェの誕生日はやって来た。 前の晩に最後の一つが完成し、結局リトは五つとも魔力石にしてしまったのだ。 最初の三個は不慣れで魔力のこもり具合にムラがあるものの、残り二つはミリィもダイトも手放しで褒めてくれ…
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高鳴る胸と芽生える気持ち
授業が終わったあと、ミリィに連れられてリトは王宮内にある騎士団の詰め所に訪れた。 ここは各騎士団共通の部屋になっており、全体会議を行ったり共用している資料や資材を保管してあったりする。 入ってすぐの部屋は共有空間で、そこから各部屋に繋がっ…
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心に浮かぶ不安と想い
お互いに、強い感情を持って相手を愛するには至らない状況だけれど、リトだけではなくロヴェも出会った時から印象が強く残っているらしく、リトに好意的だ。 将来を見据えて、結婚をするならばお互いを理解しよう、と二人とも前向きでもある。 王族の番関…
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二人きりのお茶会
行動が決まると、リトは早速ベルイに自分がしたいと思う内容をすべて伝え、ロヴェの予定を調整して欲しいともお願いした。 難色を示されるかと思ったけれど、驚くほどあっさりと承諾され、勉強については教師を探し数日中に厳選するので、そのつもりでと念…
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王宮暮らしのはじまり
二人でつかの間のお茶会を楽しんだあと、ロヴェの対応は早かった。 最初にあてがわれた客室ではなく王族の居住区、獅子の宮殿に部屋を改めて用意され、今度は部屋の広さにリトは慄く羽目になったのだが。 広すぎて落ち着かないし、こんな空間でたった一人…
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獣王の素顔
温室の内部はなんとも形容しがたいが、あえて言うならば清浄な空気が漂う、神聖な場所という印象だった。 入り口付近、広く空間の取られたホールを抜け、石畳の道を逸れずに進んでいくと、両脇に花壇を配した横幅が二人分ほどの道に変わる。 花壇では真っ…
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