長編

78.もう離さない※

 何度もキスを重ねたあとは光喜のおねだりで一緒に風呂に入った。ギリギリまで恥ずかしがって抵抗していた小津だったが、ふらつく光喜を見て放っておけなくなったようだ。しかし一緒に湯船に浸かり、情事の痕をありありと残す光喜の身体を見てのぼせていた。…

77.好奇心と言う名の欲※

 静まった部屋の中にぬちぬちと粘るような水音と荒い光喜の呼気が響く。さすがに同じ男だけあって感じる場所を熟知している。ゆっくりゆっくりと高みへ押し上げられるような感覚。一気に達してしまいたい気持ちとこの快感をずっと味わっていた気持ちがせめぎ…

76.甘さを感じる

 初めて触れた唇は少しかさついていた。けれどなぜだかひどく甘くて蜂蜜を舐めているような気分になる。その甘さを絡め取るみたいに何度も口づけて、かさつく唇が濡れるほど深く合わせた。そして触れるだけだった口づけは次第に熱を帯びて、その先を求めるよ…

75.ようやく繋がった想い

 昨日の出来事が夢幻でも良かった。そのままなにも言わずにいなくなられてもいい、そのくらいの覚悟は光喜にもできていた。それでもこんな風に二人の時間に他人を混ぜ込まれたら傷つく。「悪かった、ちょっと配慮が足りなかった。小津さんがパニクってるから…

74.想像もしない展開

 深い眠りから目が覚めた時、そこに小津の姿はなかった。目を瞬かせて身体を起こしたら、腰がひどくだるくて重い。肩から毛布が滑り落ちると、そこには昨夜の情事の痕が残っている。身体中に散ったうっ血の痕をなぞって光喜はふっと重たい息を吐く。 横たわ…

73.縋りつく欲情※

 マーキングするみたいに何度も吸いつかれて、それだけで肩が震えた。滑り落ちた唇は胸まで下りて、熟れた赤い尖りまでたどり着くと肉厚な舌で撫でられる。舌先でいじられるだけでぞくぞくとしてしまい、光喜の口からは甘い嬌声がこぼれた。「ぁぅっん、あっ…

72.初めての経験※

 自分に覆いかかる影、それに驚いて光喜は身動きできないでいた。けれどふいに身体を撫でられてビクリと肩を跳ね上げる。乱れたTシャツの裾から手が差し込まれて、思わず身をよじってしまった。 それでもその手は離れていかず、それどころか身体のラインを…

71.先走る気持ちと冷静さ※

 それ以上はいけないと思うのに、高ぶる熱を手のひらに押しつけてしまう。自分とは違う感触は思っているよりも興奮させられる。できるなら直接触って欲しいけれど、さすがに光喜にもそこまでの度胸はない。 仕方なしに自分の手を突っ込んでトロトロと蜜をこ…

70.触れる確かな温度

 普段の自分はどちらかと言えば理性的であったと光喜は思う。けれど二者択一を迫られて自分で自分を追い詰めた結果が、目の前にある。風呂から上がった小津はそれを見てひどく困惑をしていた。 しかし光喜は自棄を起こした自分に気づいてはいたが、頭の中は…

69.天使と悪魔

 ゆっくりと隣にしゃがみ込み、下を向いている横顔を覗き見た。顔を近づけても反応がないところを見るとかなりぐっすりと寝ている。じっとそれを見つめていた光喜は壁に手を付いて身を屈めると、額に唇を寄せた。 本当は寝息を立てている唇にしたいと思った…

68.引き止める方法は

 こんな風に小津から抱きしめられたのは初めてだ。そういう意味があっての状況ではないことはわかっていても、高鳴った胸が落ち着かない。どんどんと早くなっていく鼓動は耳元で鳴ってるみたいな錯覚をする。 それに気づかれたらと思うと恥ずかしくなって、…

67.握りしめた温かさ

 視線が絡んでどのくらい経っただろう。二人の様子を勝利と鶴橋は黙ったまま見守っている。そのうち詰まった息が苦しくなったのか、小津が大きく肩で息をした。けれど光喜の視線は先ほどからブレることなくまっすぐだ。「俺のマンションは小津さんのアパート…