夏日05
夏らしい入道雲が真っ青な空に浮かぶ。八月になり毎日うだるような暑さが続くが、バテている暇もなくなにかと仕事が忙しい。ここ数年こんなに忙しかったことなんかなかったのにと思ったが、ふと我に返った。そういえばここ数年の自分は学校に出勤しているも…
はじまりの恋はじまりの恋
夏日04
自分の名前を言い当てられたのが予想外だったのか、月島は驚いた表情を浮かべたままあずみを見つめる。少しだけ警戒の色を見せたその反応に、あずみは慌てたように声を上げた。「西岡先生からお話は聞いてます! えっと、私、写真部の部長してる片平あずみ…
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夏日03
いつだって彼の隣に立つのは自分なのだと主張したくなる。でもそれはまだ叶わないのだということも充分に理解している。だから二つの感情のあいだに挟まれて、時折身動き出来なくなる。そして困ったように笑う彼の顔を見るたび、己の小ささを実感するのだ。…
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夏日02
というのも二人で旅行に行ってから藤堂の態度が前よりはっきりして、喜怒哀楽がわかりやすくなった。時々甘えたりもしてくれて、それはものすごく嬉しいのだけれど、その分だけこうしてブラックな部分もはっきりしてきた。「……もう、いいです。先生に怒っ…
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夏日01
夏の陽射しが降り注ぐ七月。学校はまもなく夏休みに入る。長い休みを前に、生徒たちの気持ちが浮ついているのが見て取れるほどだ。 かくいう僕も夏休みを待ち焦がれている一人なのだが、残念ながら教師の夏休みは生徒とは違いそんなに長くはない。それでも…
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決別24
ボロボロとこぼれ落ちる涙は、両手で拭っても拭っても止まらなくて。藤堂の右手を強く掴んだら、やんわりと握った手を解いて肩を抱き寄せてくれた。あやすように優しく髪を撫でてくれる手にすり寄り、僕はいまだ止まらない涙をこぼした。「さっちゃんが、そ…
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決別23
あまりにもあっけらかんとした母の言葉に呆気にとられてしまった。いや、反対されたかったわけではないし、むしろ母にはちゃんと認めてもらいたいと思っていたから、結果的には問題ないのだが。あまりにもあっさりとし過ぎてどう反応していいのかわからない…
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決別22
こんな状況で言い訳なんか思いつくはずもない。母の目の前にあるのは、僕と藤堂が二日間一緒に過ごしたという誤魔化しようもない事実だけだ。 うろたえてあたふたとしている僕を見かねたのか、隣に座っていた藤堂がほんの少し身を乗り出す。けれど口を開き…
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決別21
休日を利用して藤堂と初めて二日間も一緒にすごすことが出来た。あれから食事をして水族館にも行って、すごせるだけの時間をすごした。そして陽が暮れた頃に帰りの新幹線に乗り、帰路へついた。でもこんな日をそう簡単にすごせることが出来ないとわかってい…
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決別20
肩口に頬を寄せてぎゅっと藤堂の背中を抱きしめる。力強く抱きしめ返してくれる腕が嬉しくて、胸の鼓動はトクトクと音を早めた。なに気ない瞬間が幸せだなと感じる。「どうしてこんなに可愛いのかな」「別に、可愛くなんてないぞ」「可愛くてどうしようもな…
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決別19
恋愛とかそういうのって、あまり僕には向いていないのかなと思うことがいままでもよくあった。よほど根気強い人でなければ、僕の鈍さとかデリカシーなさ過ぎなとことか、言葉が足りないところとか、我慢出来ないと思う。実際にそれが別れる原因になったこと…
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決別18
しばらく顔を見合わせたまま沈黙が続く。それはほんのわずかな時間だけれど、僕の心臓ははち切れそうなくらい大きく脈打つ。じっとこちらを見る藤堂の瞳からいまはなにも読み取れない。このまま黙ったままではいられなくて、意を決して僕は声を上げた。「あ…
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