長編

初候*玄鳥至玄鳥至(つばめきたる)

「桜の木の下には死体が埋まってるそうですよ」 新学期といえば、すべてが新しく輝く季節だろう。弾んだ声をあちこちで聞きながら、暁治は迎え入れられるように新しい職場の門をくぐった。 まだ少し早い時間、校舎の奥にちらちらと視界を横切る桃色に誘われ…

次候*桃始笑(ももはじめてさく)

 この家の玄関入ってすぐの部屋は仏間になっている。納屋の荷物を言われるまま運び入れると、朱嶺は仏間の真ん中に立って辺りを見回した。 暁治は昔からなんとなく、この部屋が苦手だった。奥に仏壇が置いてあって、しんと静まり返っているせいなのもあるの…