シリーズ

コイゴコロ01

 仕事の業種が違えば、相手と休みが被るなんてことは少ないだろう。サービス業とオフィスワークともなると、ほとんど合わない。 けれど最近になって、月に一度くらい向こうが休みを合わせてくるようになった。 休日が一番忙しい仕事だと言うのに。 しかし…

デキアイ05

 広海先輩はなにも言わずに、黙々と足を進める。次第に駅に向かう道から少しそれた。 そのまま静かな住宅街を抜けて行くと、ふいに鮮やかな色彩が目に飛び込んでくる。 突然目の前に広がったのは、銀杏と紅葉の色づき。背の高い木々に赤や黄色の葉っぱが生…

デキアイ04

 一体どこまで本気なのか。それがよくわからなくてあからさまに警戒をしてしまう。 広海先輩に気があるとか、俺なんかを可愛いとか言うその人は、あっけらかんとしているけど笑うとやっぱりうさんくさい。 でもおどけたふりをしているが、多分思うよりもず…

デキアイ03

 広海先輩は物事に対して、きっぱりはっきりした性格だ。 まどろっこしいことは嫌いで、日本人にしては珍しくイエスとノーもためらわない。 でも俺との関係は、そんな中では曖昧なものだったんじゃないかと思う。 だから彼は自分と俺との関係について、は…

デキアイ02

 気持ちの底のほうに刺さっていた棘がなくなり、気持ちもすっかり上向いた。 終始俯きがちだった城戸さんも最後には笑ってくれたし、やっと一段落した感じがする。 この先のことを考えれば、ギクシャクしたままじゃお互いに仕事もしにくかっただろう。 ど…

デキアイ01

 最近は季節が移り変わるのが早い。 大人になると時の流れが速くなる、というのは本当だと思う。暮れが近づくと、それを日増しに感じるようになる。 いつでもうちの店は忙しくて、暇だなんて思ったことは一度もないが、イベントごとがある月は一段と慌ただ…

パフューム06

 背中がぴりぴりとするほどに、快感が身体を駆け巡る。その感覚に身震いしながら俺は中を舐るみたいに腰を動かした。 何度も奥を擦られるのがたまらないのか、広海先輩は半開きにした口元から掠れた艶っぽい声を漏らす。 恍惚として瞳を潤ませるその表情も…

パフューム05

 喉に張り付いた、粘つく青臭いものを飲み下して、浅く呼吸を繰り返す愛おしい人を見下ろす。 白い肌がほんのり上気して、彼の香りがさらに立ちのぼるような気がした。 その甘い香りは媚薬みたいに濃厚で、あらゆる感覚を刺激する。 上下する胸元に手を這…

パフューム04

 あらわになった彼の上半身は均整がとれていて、いつ見ても綺麗だ。 うっすらと割れた腹筋を指先でなぞり、俺は臍から胸元に向けてゆっくりと舌を這わせた。「……っ」 微かに熱い息を吐く広海先輩を上目で見ながら、胸元にある柔らかな突起を何度も執拗に…

パフューム03

 少し先を足早に歩く広海先輩は、なにも喋らずに前を向いている。 掴まれていた腕はいつの間にか離れて、俺は彼の後ろを黙ってついて歩いた。 人の喧騒も減り、しんと静かになった空間――どのくらい歩いたのか、どこまで来たのかわからなくなったその時。…

パフューム02

 駅前までのらりくらりと歩いていたら、ふいに広海先輩はこちらを振り返った。 じっとこちらを見る黒い瞳にドキマギして、思わずキスしてしまいたくなるような唇から、紡ぎ出されるだろう言葉を待っていると、なぜか小さくため息をつかれた。「あの、広海先…

パフューム01

 人生にモテ期などなかった自分に、今頃そんな時期がやって来た? 高身長ばかりが目につくそれ以外は、平凡そのもの――はっきり言って奥二重で、ちっとも目元ははっきりしていないし、鼻が高いわけでもなく、パッと見ても印象薄そうで冴えないし。 性格的…