待てもお預けもできない
確約を得てのんびりと食事をした雄史たちは、晩酌に移行するとソファでいちゃいちゃし始めた。 なんとなく甘い雰囲気を察したのか、にゃむがふて腐れて雄史に何度も猫パンチを食らわせ、暴れた結果―― にゃむの尻尾に引っかかったグラスが勢いよく倒れ、…
おいしい恋が舞い降りる おいしい恋はあなたの傍で中編
新しい場所といつもの風景
思いがけない志織の本音を聞いて、その日は感情が爆発したものの、いま考えると引っ越しが決まるまでもっと出入りしておけば良かった。 ――と雄史が思ったのは、引っ越し当日だ。 部屋の明け渡しまで、三ヶ月近くあると高をくくっていたが、あっという間…
おいしい恋が舞い降りる おいしい恋はあなたの傍で中編
大きな愛情のかたまり
急いでカフェへ向かうと、店内には志織と見慣れた常連、初めて見るイケメンがいた。 店の扉を開けて立ち止まっている雄史に、志織は不思議そうな表情を浮かべる。「雄史?」「はっ! すみません! 志織さん、ただいまです」「ああ、おかえり」 かけられ…
おいしい恋が舞い降りる おいしい恋はあなたの傍で中編
まさかの確信犯?
いざ引っ越し、物件探しと言っても、ピンポイントな条件に合う場所はそう簡単に見つからない。 あれから毎日、雄史は休憩時間、帰宅後にネットを徘徊。 駅前の不動産に良い物件があればぜひ連絡を、と相談もしてきた。 いくら志織の傍にいたいからと、収…
おいしい恋が舞い降りる おいしい恋はあなたの傍で中編
入り浸りすぎ問題
ぬくぬくの布団とふかふかの恋人の胸。 暢気にニヤニヤとしながら寝ていた雄史だが、肩を揺すられて眠りの淵から意識を浮上させた。「|雄《ゆう》|史《し》、アラームが鳴ってる」「あ……すみません。あまりにも寝心地が良くて」 目が覚めるといつもの…
おいしい恋が舞い降りる おいしい恋はあなたの傍で中編
幸せの場所
「誠くん、鍵がない」「また鞄の中で鍵を行方不明にしたの?」「ごめん」「いいよ」 ようやくたどり着いた玄関扉の前で、助けを求めるように天音が見上げると、誠は苦笑しながらベルトループに引っかけたキーチェーンを手に取る。 その中から鍵を一本選び出…
触れて触って抱きしめて中編
穏やかな時間
まだ夏の暑さが残る九月の半ば。 夕焼け空を眺めながら、天音は駅前に立っていた。今日は仕事が休みで、恋人の誠と、ここで待ち合わせをしているのだ。「もう授業は終わったかな?」 鞄に入れていたスマートフォンを手に取ると、タイミング良くメッセージ…
触れて触って抱きしめて中編
一途な愛情
雨が窓を叩く音で目が覚めた時には、部屋の中は暗くしんと静まり返っていた。ふと誠の気配を探そうとして、後ろから抱き込まれていることに気づく。 自分を抱きしめる腕をそっと撫でると、天音は大きな手を口元へ引き寄せた。「誠くん」「なに?」「え? …
触れて触って抱きしめて中編
溢れるほどの愛
触れるだけだった口づけは、次第に熱を持ち始める。求めるように天音が舌を伸ばせば、絡んだ舌先に優しく愛撫された。「誠くんのキス、好き」「あんまり、可愛いこと言わないでよ」 ゆっくりと離れていった唇を、追いかけるように天音は手を伸ばす。そっと…
触れて触って抱きしめて中編
優しく触れて
触れるだけの子供みたいな拙いキスは、いままでしてきたキスの、どれよりも甘さを感じる。けれど応えるように唇を食まれて、天音はぞくりとする快感に身体を震わせた。「天音さん、もう逃げたりしないでね」「ごめんなさい。一方的に避けて、誠くんの気持ち…
触れて触って抱きしめて中編
救われる心
二人並んで歩き出すと、誠は繋いでいた手を離してくれた。天音に逃げ出す気配がなくなったからだろう。 それでも時折存在を確かめるみたいに、視線が向けられた。その眼差しに天音の胸は、はち切れそうになる。熱を感じる誠の瞳には、愛おしいという感情が…
触れて触って抱きしめて中編
本当の気持ち
一人で空回るくらいなら、誠に思っていることを伝えるべきだった。どうして逃げ出したのか、訳を話すべきだろう。受け止めてもらえなくとも、一人うじうじしているよりもマシだ。 道江と店の前で別れたあと、天音は意を決して誠のアパートへ向かった。連絡…
触れて触って抱きしめて中編