触れて触って抱きしめて

幸せの場所

「誠くん、鍵がない」「また鞄の中で鍵を行方不明にしたの?」「ごめん」「いいよ」 ようやくたどり着いた玄関扉の前で、助けを求めるように天音が見上げると、誠は苦笑しながらベルトループに引っかけたキーチェーンを手に取る。 その中から鍵を一本選び出…

《小説》触れて触って抱きしめて

新連載触れて触って抱きしめて全25話/R18無自覚人たらしな大学生×臆病な天然司書指先から伝わる想いは心を熱く震わせる第25話「幸せの場所」本日の更新で完結となります。少しでも楽しんでいただけるものであったなら幸いです。最後までお付き合いい…

穏やかな時間

 まだ夏の暑さが残る九月の半ば。 夕焼け空を眺めながら、天音は駅前に立っていた。今日は仕事が休みで、恋人の誠と、ここで待ち合わせをしているのだ。「もう授業は終わったかな?」 鞄に入れていたスマートフォンを手に取ると、タイミング良くメッセージ…

一途な愛情

 雨が窓を叩く音で目が覚めた時には、部屋の中は暗くしんと静まり返っていた。ふと誠の気配を探そうとして、後ろから抱き込まれていることに気づく。 自分を抱きしめる腕をそっと撫でると、天音は大きな手を口元へ引き寄せた。「誠くん」「なに?」「え? …

溢れるほどの愛

 触れるだけだった口づけは、次第に熱を持ち始める。求めるように天音が舌を伸ばせば、絡んだ舌先に優しく愛撫された。「誠くんのキス、好き」「あんまり、可愛いこと言わないでよ」 ゆっくりと離れていった唇を、追いかけるように天音は手を伸ばす。そっと…

優しく触れて

 触れるだけの子供みたいな拙いキスは、いままでしてきたキスの、どれよりも甘さを感じる。けれど応えるように唇を食まれて、天音はぞくりとする快感に身体を震わせた。「天音さん、もう逃げたりしないでね」「ごめんなさい。一方的に避けて、誠くんの気持ち…

救われる心

 二人並んで歩き出すと、誠は繋いでいた手を離してくれた。天音に逃げ出す気配がなくなったからだろう。 それでも時折存在を確かめるみたいに、視線が向けられた。その眼差しに天音の胸は、はち切れそうになる。熱を感じる誠の瞳には、愛おしいという感情が…