シリーズ

その瞳に溺れる04

 その後の竜也と言えば、終始俯きがちに黙々とパンケーキに向かっていた。頬や耳も真っ赤に染めたままで。 そんなウブな反応が面白くて、のんびりとコーヒーを飲みながら、ずっと眺めていた。けれどそうしているうち視線に、耐えきれなくなったのか「見ない…

その瞳に溺れる03

 映画が終わる頃には、ハンカチはくしゃくしゃで、泣き過ぎで目が赤くなっていた。啜る鼻をティッシュで勢いよくかんで、またほろほろと涙をこぼす。その顔が可愛くて、指先で涙を拭えばほんのり頬を赤く染める。 しかしなんとなく話の流れを見はしたが、恋…

その瞳に溺れる02

 大体休日は、デイトレードで値動きを見ながらの一服と読書、さもなくば休日出勤。そして夜には飲みと遊びに向かう。しかし最近は昼間の時間を潰したあとは、竜也の仕事を見計らって、彼の元へ向かうことがほとんどだ。 相手の家で食事をして、のんびりと甘…

その瞳に溺れる01

 遊ぶ相手は男だろうが女だろうが構わない。見た目がそれなりに良くて、後腐れなく遊べるなら誰でもいい。ただし一回寝たやつと二度寝ることはない。遊びは一夜、それは必ずだ。束縛されるなんてことはごめんだからな。 連絡先を交換なんて絶対にしない。興…

街角は恋をする04

 昨日の夜に散々教え込んだ性感帯だ。まだ忘れてはいないのだろう。と言うよりも、この身体は快楽に対してまっさらだ。女相手には勃たなかったので、いままで自慰もろくにしてこなかったと言っていた。 なおさら他人に与えられる快楽はたまらない刺激になる…

街角は恋をする03

 甘露に沈み込むような感覚は一夜明けても抜けきらなかった。夢心地のように目が覚めて、夢でないことを噛みしめて胸を弾ませてしまうほど。「……おい、九竜。なんだか今日は腑抜けてるな」「ああ、野上さん」 ぼんやりと窓の外を眺めていたら、喫煙ルーム…

街角は恋をする02

「だからと言って、いきなり相手を探すのはハードルが高いんじゃないのか?」「ほ、本当にそんなつもりじゃなくて。男性と少しお話がしてみたかっただけなんです」「ゲイの男と話してみて自分の反応を確かめたかったってことか? やめておけ。あんたみたいな…

街角は恋をする01

 仕事が一段落して忙しさから解放されると、人と言うものは気が緩みがちだ。もう頭の中は適当にいい相手を見繕って一晩楽しむことばかり考えている。 常日頃そんなことばかりを思っているわけではないが、大仕事のあとはより一層自由になりたいものだ。しか…

コイゴコロ05

 腰を動かすたびに、ギシギシと二人分の重みを載せたベッドが軋む。 冷えた空気の中でも、汗が滴り肌の上を滑り落ちていく。吐き出す息は熱くて、頬も紅潮して火照っている。 しかしそれ以上に身体が燃えるように熱くて、突き抜けるような快感に腰を振るの…

コイゴコロ04

 シャワーが流れっぱなしの、湯気が立ち上る風呂場で、ねちっこいキスをする。 唾液を拭うのも忘れてひたすら舌を絡ませた。身体の熱が高まって、口の中まで溶けそうなくらい熱い。 撫でられるたびに、ゾクゾクとした痺れが駆け抜けて、だらだらとしずくを…

コイゴコロ03

 苺のショートケーキを、大雑把にフォークで突き合って、半分くらい平らげて、スパークリングワインを二人で一本空けた。 それほど度数の高いものではなかったので、ほんの少し酔いを感じるくらい。 しかしいい気分で風呂に入ろうと思ったら、長湯はしない…

コイゴコロ02

 駅前で瑛冶と合流すると、そこからほど近いスーパーに二人で寄った。しかし今日は鍋焼きうどんにすると言っていたので、それほど買うものは多くない。 うどんとそれに入れる具。 瑛冶が作る鍋焼きうどんはすき焼き風なので、長ネギと牛肉と焼き豆腐と卵、…