何度も繰り返してしまう
あれからどれほど飲んだのか、わからないけれど、頭がふわふわとしていた。 自分がカウンターに、突っ伏していることに礼斗は気づいたが、起き上がれるほどの余力がない。 小さく唸り、ぎゅっと拳を握る。するとすぐ傍で、くすくすと笑う声が聞こえた。 …
トライアル・アンド・エラー!~もう一度、恋しませんか?短編
可愛くない態度
直輝と二人で、折り合いをつけたサイトのデザイン。そのあともじっくりと意見を出し合い、さらに変更を加えた。 そうして仕上げたものを、取引先へ提出してみたところ、思いのほか大好評だった。「西崎さん、さすがですね」「いや、俺一人でやったわけじゃ…
トライアル・アンド・エラー!~もう一度、恋しませんか?短編
もしかして未練?
「ちょっと来い」「アヤ?」 怪訝そうな直輝のことは振り向かずに、礼斗はプリンターで出力されたものを、さっと取り上げる。そして先に立って、空いた会議室に移動した。 黙ってついてきた直輝が、扉を閉めたのを確認すると、今度は紙の束で彼の額を叩く。…
トライアル・アンド・エラー!~もう一度、恋しませんか?短編
思いがけない展開
目が覚めるとともに、チチチッと、小鳥のさえずりが聞こえる。ベランダに雀が集まっているのだろう。いつも信昭の家には、小鳥が集まる。 餌をやっているわけでもないのに、不思議なものだ。 そんなことを考えながら、礼斗は柔らかなシーツの心地良さに、…
トライアル・アンド・エラー!~もう一度、恋しませんか?短編
二人で交わす酒
「すみません。まだ時間、大丈夫ですか?」「ああ、そろそろ」 礼斗が一人でのんびり酒を飲んでいたら、ふいに格子戸が開く音がした。もう閉店間際で、こんな遅い時間に客かと腕時計に視線を落とす。 二十一時半を回ったところなので、残業帰りのサラリーマ…
トライアル・アンド・エラー!~もう一度、恋しませんか?短編
ぶつかり合いと食い違い
「却下だって言ってるだろう」「いや! これは絶対にオレンジやイエロー系にするべきだよ!」「いや、寒色一択だ。ブルーでいい」「配色のバランスを考えても、ここは」「そんなふわふわした色、このサイトのイメージじゃない」 小さな会議室。そこで机を挟…
トライアル・アンド・エラー!~もう一度、恋しませんか?短編
Days with you/07
二人で抱きしめ合って、二人の音が混ざり合うような不思議な感覚になった。触れている熱が伝わっていくようで、ひどく安心する。胸元に頭を預けている日向の髪を撫でながら、雪羽は愛おしさが募るような温かい気持ちにくすぐったさを覚えた。それでもその気…
You're the one短編
Days with you/06
ひと騒動が終わったあともしばらく噂は尾を引いたが、いままでの二人の様子を見慣れているクラスメイトたちの対応でかなり緩和した。 それは日向が雪羽にべったりなのは今更だから、それをいまになってつついてもなにも面白いことはない。好きなら好きでい…
You're the one短編
Days with you/05
まっすぐとした鞠子の視線にもその目を揺るがすことなく、日向は雪羽に向かい手を差し伸べてくる。やたらと真剣な眼差しを向けられて、照れくさいこそばゆさを覚えた雪羽はやんわりとはにかんだ。そして差し出された手のひらに手を重ね、それをぎゅっと強く…
You're the one短編
Days with you/04
その感情をどんなに否定されたとしても譲れない想いがある。だからどんなこと言われても一歩も退けない時が必ず来る。 いつもより耳につくざわめきに気づいたのは、登校してすぐのこと。ひそひそと囁き、じろじろと視線が向けられる。けれどそのあからさま…
You're the one短編
Days with you/03
時間がもったいないと言った通りに、日向は足早にいつもの空き教室へ向かった。そのあいだの雪羽と言えば、ひどく大事に抱えられて、恥ずかしさのあまり胸元に顔を埋めるので精一杯だった。触れた場所から伝わる二つの音が混ざり合って、やけに早鐘を打ち始…
You're the one短編
Days with you/02
常日頃べったりな雪羽と日向ではあるが、それも学校の中で過ごすほんの一部分に過ぎない。二人はまず在籍するクラスが違う。二人の通う学校は生徒数が多いためにクラスも比例して多く、一学年八クラスある。そして雪羽はHクラスで日向はAクラス。教室が校…
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