ゆっくり優しくして
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 恥ずかしさが増して、ジタバタともがくけれど、直輝は礼斗を押さえつけたまま離さない。それどころか彼は瞳に熱を灯らせる。

「いきなりスイッチ入れんな!」

「弱ってるアヤを見てたら、ムラムラしちゃった」

「サイテーだな!」

「あ、でも身体が辛いか。熱が上がったら困るもんね。無理は禁物って先生も言ってたし……って、なんで殴るの?」

「そうやってすぐ手の平を返すのやめろ! あんたの悪いところだ!」

 ぱっと身体を離した、直輝の肩口を思いきり叩くと、驚きに目を丸くする。だが一方的に、礼斗はバシバシと音が鳴るほど肩を叩きまくった。
 さらに足蹴にすれば、さすがに耐えきれなくなったのか、その足を押さえ込まれる。

「ご、ごめん。俺の一方的な気持ちで、アヤに無理を強いたら嫌だなって思ってたから、いままでは躊躇してたんだ。でも、それが不安にさせるだけだってわかったから、これからは自分に正直になるよ。だからアヤも、たまには正直に言ってみてよ」

「なにをだよ!」

「いまどうされたいか」

「……ば、馬鹿じゃねぇの!」

「ほらほら」

 猫をあやすみたいに、喉元をくすぐられて肩が震える。恨めしげに礼斗が睨み付けても、直輝は口元に笑みを浮かべるばかりだ。
 喉元に触れていた指先が、首筋に這わされると、礼斗の口から小さく声が漏れる。

「可愛いね、アヤ」

「くそっ、じれったい! やるなら最後までやれよ!」

「うん」

 にんまりと笑みを浮かべた彼は、すぐに瞳に欲を浮かべる。ぞくりとした感覚に、礼斗が息を飲み込めば、首筋に齧り付かれた。
 さらにはTシャツの裾から滑り込んでくる、手の平の熱が身体中に広がって、身震いする。

「ぁっ、んっ」

 肌の上を唇が滑るたび、ひくんと身体が反応した。この先の行為に、胸で期待を湧かせているのが、自分でもわかる。
 それがひどく恥ずかしく、礼斗は直輝の肩口に顔を寄せた。

「アヤって、何回しても慣れない感じがあって、ほんと可愛いよね」

「うるさ、いっ、……あぁっ」

 文句を言おうとしたのに、ふいに胸の尖りを舌で撫でられて、腰が跳ねる。こねるように舐られると、身体に力が入らなくなった。
 礼斗が一番弱い場所、それを知っている直輝は、執拗にそこにしゃぶりつく。

「んっ、んんっ」

「もう気持ち良くなってきた?」

 口を塞いで身をよじる自分を見下ろす、直輝の目に興奮させられる。じわりと礼斗が涙を浮かべれば、さらにその目に火がついた。
 乱雑にスウェットの中に手が忍び込んで、頭をもたげ始めた礼斗の熱を握る。突然の直接的な刺激で、蜜がとろりと溢れた。

「あっ、ぁっ、……んっ、なお、きっ」

 ぐちゅぐちゅと湿った音が響くと、耳にまとわりつく音を払うように礼斗は首を振る。けれど直輝の手はどんどんと、礼斗を追い詰めていく。

「やっ、ぁっ、イク、んっ」

 膝が震え、切羽詰まった声が漏れる。シーツの上で身悶える礼斗は、すがるように手を伸ばした。

「やばい、ほんと、……加減できない。アヤ、ちょっと可愛いがすぎるよ」

 必死に背中にしがみつくと、小さな舌打ちが聞こえる。直輝を見上げたら、珍しく余裕のない顔で歯を食いしばっていた。
 また変な気を回して手を離されそうで、礼斗は背中に回す手に力を込める。

「……あんまり可愛いこと、しないでよ」

「ん、ぅっ」

 身体を引き寄せた途端に荒々しい口づけをされ、彼の手の中で熱がビクビクと震えた。それでもなお舌を絡め取るようなキスをされると、ゾクゾクとする快感が身体中に広がる。

「アヤ、アヤ、……全部欲しい」

「あんたの、好きに、しろよ」

「優しくできなかったら、ごめん」

「ぁっ」

 無理矢理にスウェットを引き下ろされて、下肢が露わになる。心許ない感覚に膝を寄せるけれど、あいだに割り入られた。
 間をおかずに尻の奥を撫でられると、きゅっとそこが収縮する。

 さらにはだらだらとこぼれるものを塗りたくり、直輝の指が侵入してきた。
 押し広げられる感覚に指先に力が入る。背中に爪を立ててしまうが、内側をかき回されて力が抜けない。

「あ、あっ、そ、んなに、したら……すぐにイク」

「何回でもイっていいよ」

「はっ、ぁっん……、指、じゃなくて、あんたの、挿れろ」

「いま挿れたら、我慢できない」

「しなくていい、から、早く」

「泣いても、絶対にやめないからね」

「ひ、ぁっ」

 ずるりと指が抜けたかと思えば、すぐに硬いものが押し当てられる。先走りで濡れそぼったそれは、簡単に奥へと押し込められた。
 足を担がれ、激しく穿たれる。突き上げられるたびに快感が増して、途中で何度か意識が飛んだ。

「んっ、ぁっ、いいっ、直輝、なお、きっ」

 ひっきりなしに嬌声がこぼれ、閉まらなくなった礼斗の口からは唾液が滴る。
 きつくシーツを握りしめる手にこぼれ落ちるが、頭の中は気持ち良さに埋め尽くされ、それどころではない。

「アヤ、全部受け止めてね」

「あっ、ぁっ、……っ」

 腹の奥に欲を吐き出されると、礼斗はビクビクと身体を震わせ達する。しかし余韻に浸る間もなく、すぐにまた身体を揺さぶられて、快感の波に落とし込まれた。
 何度も何度も繰り返し与えられる快楽は、礼斗の思考を奪う。

「直輝っ、もっと、んっ、奥、……もっと奥に」

「アヤの中もう俺のでぐちゃぐちゃ。すごくやらしい音がしてる」

「出して、もっと、中、ぁっ、もっとっ」

「可愛い。いくらでもしてあげるから、もっと欲しがって」

 腰を鷲掴みされて、身体が押し上げられるほど熱をねじ込まれる。過ぎるほどの刺激に、礼斗は開きっぱなしの口から甘く上擦った声を漏らす。
 すがるようなその声に、直輝は恍惚とした笑みを浮かべ、さらに声を誘うように身体を暴いていく。

「イクっ、もう……ぁっ」

「まだ、駄目だよ」

「ひぁっ、やだっ、いまイってる、イってるから、やめっ」

 中で何度も吐き出しているのに、直輝の張り詰めたものは萎える気配がない。身体を震わせるほどの快感も、まとわりつくように礼斗に絡みつき離れていかない。
 体勢を変え、さらに後ろからガクガクと揺さぶられて、次第に身体を支えられなくなってくる。

「アヤ、気持ちいい?」

「い、いいっ、気持ちいいっ、……あっ、直輝、そこ、もっと」

「アヤ、俺のこと好き?」

「好きっ、すきっ、直輝っ、好きだから、あぁっ」

 どんどんと直輝の腰使いに、遠慮がなくなってくる。腹の奥でその形が感じられるくらい誇張した熱が、感じる場所をゴリゴリと擦り上げた。
 激しいくらいの刺激に頭が真っ白になる。

「なお、きっ、頭おかしくなる。あ、あ、ぅっんっ」

「もっと感じて、もっと可愛い声で啼いてよ」

「あぁっ、やっ、これ以上されたら、壊れ、るっ、やだっ、ぁっ、あっ」

「そんなに気持ちいいんだ? 可愛いよ、アヤ。俺もすごく気持ちいい。アヤの中、熱くてトロトロで、ここ、俺のが溢れてきてる」

「んぁっ、や、拡げんな、ばか」

 指先で孔の縁を拡げられたまま、張り詰めた熱を出し入れされると、いやらしい水音が響き、さらに奥まで入り込むような感覚がする。
 狭いに中に指まで突っ込まれれば、二つの動きに翻弄された。

「ひ、あっ」

「アヤ、いま中だけでイったよね。めちゃくちゃ中がうねってる。たまんない」

「なお、きっ、キス、キスがしたい」

「いいよ。こっちおいで」

 体勢を変えて再び向かい合うと、膝の上に載せられる。そのまま奥へと熱を埋められ、下からの激しい突き上げで、礼斗の身体がビクンビクンと大きく跳ね上がった。

「ぁっ」

「アヤ、こっち見て。キス、するんでしょ?」

「あんた、が、激しく、するからっ」

「だって感じてるアヤ、可愛いんだもん」

 舌を絡めてキスをすれば、擦れる感触だけで気持ち良さが増す。自ら腰を揺らして刺激を求め、礼斗は直輝にしがみつきながら、甘えた声を漏らした。

「アヤ、その声、可愛い。もっと、もっと聞かせて」

「ひ、あぁっ、ぁっ、そこっ、そこ、いいっ、もっと突いて」

「ああ、もう、めちゃくちゃにしたい」

 いきなり身体をベッドに沈められて、何度も熱を突き入れられる。あまりの激しさに身体が逃げると、引き戻されて奥の奥までねじ込まれた。
 いまは自分が、どんな声を上げているのかもわからない。礼斗はシーツの上で身体をくねらせ、身悶えるように乱れた。

「な、おき、あつい、……ぁっ」

「アヤ?」

 キツく掴んだシーツを引き寄せ、礼斗は自分の身体の熱さに朦朧とした。爪先から頭の天辺まで熱湯に浸かったように熱い。
 呼吸が乱れて、苦しげに眉を寄せると、さすがに暴走していた直輝も我に返る。

「アヤっ、もしかして熱が上がった?」

「たぶん」

「ごめん!」

「抜く、な。ちゃんと中でイってから」

「アヤ、いまここで煽らないで。俺、止まれなくなる」

「いいから」

 奥まで押し込められていたものを、引き抜かれそうになって、礼斗は腕を掴んで引き止めた。それに加え今度は、自ら脚を開いて誘ってみせる。
 するとそれを見下ろす直輝の顔が、真っ赤に染まった。

「ゆっくり、してくれれば、平気だ」

「もう、アヤには敵わない」

「うん」

「こんな時に可愛く笑わないでよ」

 困ったように眉尻を下げる表情に、自然と笑みが浮かんだのがわかる。両手を差し伸ばしてせがめば、恋人は優しく抱きしめ返してくれた。

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