シリーズ

紺野さんと僕03

 美人で男らしくてすごく魅力的な紺野さんは、ずぼらで面倒臭がりで、どうしようもないくらい、駄目な人だったりする。 しかしそんな彼でも、僕にとってはどうしようもなく大好きな人。 半年ほど前に、この鈴凪荘へ僕が転がり込んでからずっと、それをアピ…

紺野さんと僕02

 力任せに布団を奪い取ると、小さく自分を抱きかかえる、紺野さんの背中が現れる。けれど長い手足は丸まり切らず、若干身体の端からはみ出していた。「寒い」「……寒いって、こんだけ天気良くて暖かいのに。ほら、紺野さんも虫干ししてあげる」 ベランダに…

紺野さんと僕01

 鈴凪荘――築六十年。 木造二階建てのレトロな雰囲気のアパート。周りは緑に囲まれ、喧騒もなく、時折小鳥のさえずりが聞こえる静かな環境――なんて格好良く言うと聞こえは良いが、ここはただのボロアパートで、もはや廃屋並。 現に六世帯入るこのアパー…

シアワセ

 もしも、もしもの世界。 いまある現実とは違う道を歩いていたら、幸せだったかもしれないと思ったことはある? 深夜一時。突然嫌がらせかと思うほど、インターフォンのチャイムが何度も部屋に鳴り響いた。眉をひそめ、立ち上がるのを躊躇っていると、二度…