シリーズ

天の邪鬼な態度

 触れた唇の熱に、なにも考えられなくなった。そうしているうちに口の中をたっぷりと撫でられて、唾液があふれる。 キスをしただけで胸がはち切れそうになる、それは天希にとって初めての経験で。気づけば縋るように、彼の腕にしがみついていた。 そのあと…

幸せの数よりあふれる笑顔03

 煌びやかなクリスマスツリーと、定番のクリスマスソング。青色のイルミネーションの光が、辺り一面を埋め尽くしている。 腕の中で笑ったミハネは、なんだか恋人同士みたいだね。なんて、のんきに顔をほころばせた。「映画の中でも、夜景をバックに抱き合う…

幸せの数よりあふれる笑顔02

 高階祐樹――その名前を聞いて、ピンとくる人はまずいないだろう。 顔を見知っていた商店街の人たちでも、彼の本当の名前までは知らない。それを身近な人間で知っているのは、祖母と友人の園田聡くらいだ。 祐樹、彼は俺の恩師の息子。 それ以上の関係は…

幸せの数よりあふれる笑顔01

 クリスマスなんてものは、いままでほとんど意識したことがない。 夜になり、祖母がご馳走を作っていてくれたのを見て、そこでようやく気づく。毎年そんな感じだ。 それなのに今年に限っては、雑踏の中にいた。イルミネーションで飾られた、街路樹をぼんや…

角砂糖

 朝、目を覚ましてリビングへ行くと、珈琲の香りが部屋に広がっている。そしてフライパンで油が跳ねる音がして、ベーコンの焦げたいい匂いが漂ってくる。それはほぼ毎日欠かすことがない。ゆっくりと視線をキッチンへ流してみれば、やたらとまっすぐとした広…