どうして気が重いなんて思うんだろう。これで答えが出るんだから、肩の荷が下りるじゃないか。やっぱり二人とは付き合えないってことになっても、それは俺の出した答えなんだから二人は頷いてくれるはずだ。そのための仕切り直しだろう。
だけどそう思うのに気分が重たいと思ってしまった。
「おい、笠原」
「ん? あ? なに?」
「なにって言うか、電話めっちゃブルってたぞ」
ぼんやり考えごとをしていたらふいに大きな呼び声が聞こえた。慌てて顔を上げると友人たちが心配げな顔をしてこちらを見ている。その顔にいまいる場所を思い出す。
視線を落とすと食べかけのカレーライス。ここは大学の食堂だ。
「悪い、ちょっと考えごと」
いまだこちらを見ている顔にへらりと笑い返して、テーブルに裏返しておいていた携帯電話を掴む。着信を確認するとそれは光喜からだった。けれどそれはそのままにメッセージを確認する。
すると案の定、光喜からのメッセージが届いていた。また夜に電話するから次は出るようにと、やけに可愛いスタンプと共に念を押されている。このあいだからしょっちゅう電話がかかってくるんだ。しかし一度出なかったくらいでは文句は言ってこない。
光喜にバイト終わったらなと返信をして、もう一件のメッセージを開くと写真が一枚。
「あの人ほんと食べ物が渋いな」
それは鯖の味噌煮定食だ。光喜も頻繁にメッセージを送ってくるが、鶴橋からも朝昼晩と結構マメに届く。少し前にこれから昼休憩ですと届いたから、今日の昼飯はなに食べるの? って返したんだった。
昨日はカレイの煮付けとかだったはず。聞くと毎日和食ばっかりで、コーヒーよりもお茶が好きらしい。
「なになに、笠原、彼女できたの?」
「えっ? ち、違う」
「またまた、いますっげぇいい笑顔だったけど」
返信をしていたら目の前の友人たちが少し前のめりになりながらニヤニヤしている。その顔に思わず顔が熱くなった。
「なんていうか、友達、みたいなものだ」
「ああ、まだ友達って感じね」
微笑ましそうな顔をされて言葉に詰まる。その言葉は遠からずって感じになるのか。
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