今夜はクレイジー・ナイト03

 相手が自分より非力な生き物だと思うと、躊躇いが生まれる。しかし冷静になれ、これは我が人生において、もっとも危機的状況だ。 しかし勢いを付けて身体を起こそうとすると、次は腰をつつつ、と指先がなぞる。 するとまたぞわりとした感覚が広がって、固…

今夜はクレイジー・ナイト02

 頭がぐらんぐらんして、目を瞑っていても回転しているような錯覚がする。これって危ない薬とか盛ってないよな? 前回に引き続き、思いっきり罠にはめられている俺ってものすごく馬鹿だろ。 意識は浮上している感じがするけれど、まぶたが開かない。 ふわ…

今夜はクレイジー・ナイト01

 常々イベントというものは面倒くさいと思うのだが、背に腹はかえられないという言葉がある。そう俺は貧乏学生なので、時給アップという言葉に弱い。十円単位だってありがたいと思うくらいだ。 そこを百円、五百円と跳ね上がり、日給一万円超えだなんてこと…

聖なる夜にお届け

 至る所で、色とりどりのイルミネーションが輝いている。街路樹もやたらと明るい光を放っていて、商店街ではクリスマスソングが流れていた。 今日は日本人の大半が浮かれ騒ぐクリスマスイブという一大イベント。 そんな中で俺はなにをしているのかと言えば…

ベルベット・キャンディー03

「ん? もしかしてそれって、マシュマロチョコ?」「ああ、マシュマロにビターチョコを絡めて冷やしたやつ」「で、どうするんですかそれ」「機械にザラメをセットして」 ピンク色のザラメを、中央の空洞にセットをして、機械のスイッチを入れる。するとブー…

ベルベット・キャンディー02

 この時期は決算があるので、事務仕事もなにかと多い。数字を一桁間違うだけでも大変な問題だ。 経理はピリピリしてるから、小さいミスでもかなりぐちぐちと言われる。 このあいだは、申請が一日遅れた社員のところに、速攻で内線がかかってきたくらいだ。…

ベルベット・キャンディー01

 水地咲良という人は本当にイベントごとに疎い。クリスマス、バレンタインデー、誕生日――色々あるけれど、どれも基本的にスルーする。 いや、これは疎いというのには、語弊があるかもしれない。あれはきっとイベントごとが嫌いなのだ。 彼の気持ちを一言…

チョコより甘いもの02

 学生時代など、義理でもチョコを一つもらうだけで喜んでる級友はいた。おそらくステータスに似たものが、あるのかもしれない。 思えば昔からそういうのが面倒くさかったから、本命だろうが義理だろうがチョコはずっと突っぱねてきた。 なので生まれてこの…

チョコより甘いもの01

 朝が目が覚めて、いつもと変わらぬ調子で台所に立つ背中に声をかけた。するとそいつも、いつもと変わらない様子で振り返って、「おはようございます」と笑みを浮かべる。 別段なにかが違うような雰囲気は、微塵もなかったのに、朝食を食べ終えていざ仕事へ…