パフューム04

 あらわになった彼の上半身は均整がとれていて、いつ見ても綺麗だ。うっすらと割れた腹筋を指先でなぞり、俺は臍から胸元に向けてゆっくりと舌を這わせた。

「……っ」

 微かに熱い息を吐く広海先輩を上目で見ながら、胸元にある柔らかな突起を何度も執拗に舌先でなぶる。すると次第にピンと立ち上がり、その存在をはっきりと主張する。赤く充血し、唾液で濡れたそれを見ているだけでたまらなく興奮してくる。むしゃぶりつくように吸いつき、舌で転がし押しつぶすとそれはますます硬度が増した。

「ん、ぁ……」

「広海先輩、可愛い」

 口元を手の甲で塞ぎ、堪える姿がたまらなく愛おしい。
 もっと乱れさせたくて、あいた片方の突起は指先でつまんで強く刺激を与える。時折、舌で舐めてやると小さな吐息が広海先輩の唇から漏れる。徐々に上がる体温と相まって、薄らと開かれた唇が赤く色づいていく。
 それに誘われるように手を避けて口づければ、求めるように舌を差し出され、柔らかくて熱いそれを絡めとると、両腕を首に回し強く抱きしめられた。

「ふ、ぅん……」

 舌を擦り合わせて、内頬や上顎、歯列の形を確かめるように舌先で撫でまさぐる。すると広海先輩の鼻先から甘い声が抜ける。そして喉奥に溜まった二人分の唾液を飲み下し、上下に動く彼の喉元がひどくいやらしく見えて、俺の心臓は忙しなく脈打った。
 こうして腕に抱く時の彼は、普段のクールさなどは欠片も残さず払拭されて、むしろ扇情的なほどだ。キスに夢中になっている彼の腰が、微かに揺らめいたの見て、俺はその下肢に手を伸ばしベルトのバックルを外すと、少し乱雑にスラックスのファスナーを下ろした。敏感な場所に伸ばされた手に、身をよじるようにしてまた腰が揺らめく。
 伸ばした俺の手から逃れようとするその動きに俺の顔はだらしないくらいに緩んでしまう。こんな時でも素直じゃない広海先輩が可愛い。下着の上から撫でるだけでも反応しているのに、嫌がる素振りを見せる。気持ちいいことは嫌いじゃないのは知っているので、おそらく流されて俺にいいように扱われるのが癪なのだろう。

「一回イっておいた方がよくないですか? ここ、もうすごいよ」

「……」

 揶揄する俺の言葉に小さな舌打ちが返ってきたけれど、そっと触れたそこは、ローライズのボクサーパンツにくっきりと形を浮かび上がらせている。指先で先端をなぞれば、じわりと濡れてしみが広がった。そしてしばらく、わざと指先でつつく真似をしていたら、焦れたのか思いきり手に昂ぶったものを押しつけられてしまった。
 けれどその行動に俺の顔はますます緩みにやけてしまう。

「我慢出来なくなりそう」

「……んっ、んん」

 再び唇を奪い口の中を蹂躙するように犯していくと、伸ばされた腕に背を抱き込まれた。俺をきつく抱きしめる広海先輩は、はしたなく口を開いて唾液を口の端からこぼす。伝い落ちるものを舌先ですくえば、肩を震わせぎゅっと目とつむった。

「……瑛治、待て」

「待てません。全部脱いじゃいましょう」

「あ、やめっ」

 さんざん貪ったあと唇を開放すると、制止の声がかかる。どんどんとペースが俺に傾いているのが気になるのだろう。しかしそんな声は気に留めず、スラックスとボクサーパンツのウエスト辺りを両手で掴むと、俺は一気にそれらを引き下ろした。

「お前、変態くさい」

 そこに現れた濡れそぼった昂ぶりと、すらりとした綺麗な脚を目の前にしてつい鼻息が荒くなってしまった。剥き出しになった足の指先を舐めたら、くすぐったいのか眉をひそめられた。けれどその表情が色っぽくて、続けて指を一本ずつ含んで舐め上げた。

「変態でもいいです」

 指の股まで丹念に舐めて、足の甲や足首にまで舌を這わせた。

「お前、しつ、こい」

 小さく何度も跳ねる身体を抱きしめて、肌に鼻先を押しつけたら頭を軽く叩かれた。しかしこの香りはたまらなく欲しくなる匂いだ。何度も優しく口づけていけば、堪えきれずに唇から漏れた声が微かに聞こえてくる。

「あっ……ぅん、瑛治っ」

 優しくあますことなく舌で撫でキスをすると、足先できゅっとシーツが握られ、広海先輩の両手が俺の頭を引き寄せるように力がこもる。

「広海先輩、大丈夫?」

 俺の声につむっていた目がうっすらと開かれる。涙が浮かんできらきらとしたその視線に、言葉に出来なくらいたまらない気分にさせられた。

「もっと気持ちよくしてあげるね」

 引き締まった足首を掴んで左右に広げると、その間に身を滑り込ませる。そしておもむろに先走りをこぼしていた熱いものを口に含んだ。刹那、びくりと広海先輩の身体が跳ね上がり、太腿がヒクヒクと痙攣する。手淫もせずにいきなり口内に含まれたことが、いつもより敏感にさせたのだろうか。口の中でいまにも弾けそうなほど熱が震える。
 何度も唇から漏れる余裕がなさそうな声に煽られる。裏筋や陰嚢を指先で丹念に揉み撫で上げ、卑猥な音を立てながら頭を上下させれば、小さな嬌声が頭上から降ってきた。熱に浮かされたような艶っぽいその声に、自身の熱も下肢に集中してくる気がしたが、いまは目の前の欲に夢中で、それは頭の片隅に追いやった。

「瑛治……」

 小さな声で名前を呼ばれた。さらりと髪を撫でられる感触に、ちらりと上へ視線を向ければ、目尻を赤くし、切羽詰まった様子で瞳を潤ませる視線とぶつかる。瞬間、じわりと身体が熱くなり、気づけばさらに夢中で彼の熱にしゃぶりついていた。

「ん、ぁっ、待てっ、やめ」

 もがく身体を押さえつけ、さらに追い詰めていくと、押し寄せる快感を堪え目をつむる彼の目尻から、透明な雫が伝い落ちた。それが生理的なものであるとわかっていても、儚さを感じてそれにまた興奮してしまう。
 そして熱い吐息で上擦った声を上げ、何度も身体をよじって限界を伝えてくる。その様がたまらなくいやらしくて、もっとそれが見たくて、きつく先端を吸い上げた。

「……んっ」

 するとすぐ傍にある内腿が震えて達するのを堪えたのがわかる。それはまだ足りないとねだられているようで、思わず口元が緩んでしまう。しかし笑みを深くし奉仕を怠っていると、その先を急かすように指先で髪を撫でられた。
 そんな可愛い反応に応えるべく、舌をそそり立った熱にねっとりと絡みつけ、唇で挟んでしごき上げれば、いやらしく腰が揺れた。そっと指先を揺れる腰に伝わせると、昂ぶった身体がびくりと跳ねる。
 続けて脇腹や背中、手が届く場所をくすぐるように触れるか触れないか、微妙な程優しく撫で回せば、甘い声が心地いいくらい響いてくる。

「瑛治、やっ、あっ」

 指先の愛撫を続けながら唇と舌も動かせば、広海先輩の腕が伸ばされ刺激を望むように熱を押しつけられる。

「広海先輩、もうイキそう?」

 唇を離して指先で先端を捏ね回せば、広海先輩は小さく息を飲んだ。一度は堪えたが、おそらくもうかなりの限界まで来ているのだろう。それでも焦らしながら、溢れてくる先走りを全体に塗りたくるように手を上下させた。

「あっ、もう早、くしろ、馬鹿」

 手の動きに反応するように仰け反った身体に思わず生唾を飲み込む。急くように腰を揺らす姿を見下ろしていると、請うような視線が俺を見つめる。

「可愛い」

 舌先で唇を舐めながらほくそ笑むと、潤んだ瞳がゆらりと揺れた。それを目端に捉えながら、絶頂を待ち望む彼の熱にむしゃぶりついた。
 その瞬間、髪に触れていた指先に力がこもり、漏れる嬌声の間隔が切羽詰まって短くなっていく――この瞬間が俺はとても好きだった。自分の手の内に堕ちてくる彼を感じられて、ぞくぞくとするほどの快感を覚える。
 心を揺さぶる声に、頭の中は目の前の人をグズグズになるくらい溶かしたい気持ちでいっぱいになる。唇と手の動きを早めて追い立てれば、浮かんだ涙がまた一筋頬を伝って落ちた。

「広海先輩、綺麗だね」

 気づけばその雫を舐めとり、まぶたや頬、唇に口づけを降らしていた。こうして広海先輩を腕に閉じ込めている瞬間がたまらなく幸せだ。ほかの誰でもない俺だけに見せる素顔が愛おしい。
 淫らなこの表情も声も身体も、俺だけしか知らない。彼をこうして抱くのはこの世で俺一人。そう思うとますます気持ちが昂ぶっていく。

「瑛治、もう……」

「ん? 限界? イキそう?」

 声を噛みしめる彼は小さく何度も頷き、両腕で表情を遮る。けれど俺はわざと両手首をひとまとめに掴み上げて、表情をあらわにさせると指と手の動きを強めた。粘る音が響くたびに彼の身体がヒクヒクと震える。

「ひ、あっ、ああっ」

 再びそり立つ熱を口に含めば、身をよじり限界を伝えていた身体が小さく跳ねて、喉奥に熱いものがほとばしった。