コイゴコロ04

 シャワーが流れっぱなしの湯気が立ち上る風呂場で、ねちっこいキスをする。唾液を拭うのも忘れてひたすら舌を絡ませた。身体の熱が高まって、口の中まで溶けそうなくらい熱い。
 撫でられるたびにゾクゾクとした痺れが駆け抜けて、だらだらとしずくをこぼしながら何度も高みへ押し上げられた。吐き出していないのに身体ばかりが煽られて、あまりの気持ちよさに我を忘れそうになる。

「先輩大丈夫? ベッドに行こうか? ここでしてると風邪引きそう」

「そんなのいいから、早く」

「うん、俺も早く広海先輩を可愛がりたいけど、ほんと今日は冷えるし。俺に掴まって」

「うるせぇ、いきなり冷静になってんじゃねぇよ」

 唇が離れてぬくもりがなくなるとひどく口寂しい。与えられていたものを急に取り上げられた気分になる。しかし熱を求めるように身体を寄せれば、やんわりと引き離された。それにムッとして目を細めるが、やたらと心配そうな顔をしてくる。

 冷静ぶったその顔が気に入らなくて、目の前の身体を力任せに押し離した。そしてなにか言いたげな表情を浮かべる瑛冶を無視して風呂場から足を踏み出す。
 頭からつま先までずぶ濡れになっているので、上に来ていたトレーナーと汚れきったボクサーパンツはさっさと脱いで洗濯カゴに放り投げる。そして適当にバスタオルを掴むと、水気を拭いて裸のまま脱衣所を出た。

「待って、待って! 広海先輩!」

 まっすぐに自室へ向かい、ドアノブに手をかけたところでその手を止められる。焦ったように近づいてきた瑛冶は腰にタオルは巻いているものの、髪からは水滴がこぼれ落ちていた。とりあえず身体だけ拭いて飛び出してきたのだろう。

「ねぇ、待って先輩。こんな据え膳、食べ逃すつもりはないよ」

「もう気が失せ、た」

「嘘ばっかり。だって、ここも、ここも、物欲しそうにしてるよ」

 後ろから覆い被さるように近づいて、耳元に熱い息を吐きかけられた。そして伸ばされた手に太ももを撫でられ、反り上がったままの熱を撫でられ、充血して赤くなった胸の尖りをつままれる。
 身体をまさぐるように触れてくる両手に、じりじりと焦げている熱情を煽られた。興奮したような荒い息づかいが耳にはっきりと聞こえ、こらえるように身を縮ませる俺などお構いなしに追い詰めようとしてくる。

 下からはぐちゅぐちゅと湿った音が響き、犯すように舐められた耳からも滴るような水音が聞こえた。下半身は力が抜けそうなくらい気持ちがいい。胸の尖りはきつくつままれるほどに身体をビクビクとさせてしまう。
 いつも以上に感じる快楽に扉に両手を突いてもたれかかる。すると切っ先が扉にこすれてしまい思わずそこに熱を吐き出してしまった。

「駄目だよ、先輩。こんなとこ汚しちゃ」

「うるさ、い」

「ベッドでたっぷりしてあげるから、行こ?」

「あっ、離せ」

 後ろから抱き上げられて、つま先が宙に浮く。ジタバタともがくけれど腕は弱まるどころか強くなり、後ろから首筋に顔を埋められて肌のざわめきと共に肩が震える。
 さらにきつく吸い付かれると、それだけでたまらない気持ちになってしまう。熱は高まるし、身体は疼くし、期待する後ろは浅ましいくらいひくつく。

 ベッドの上に少し乱雑に投げ出されて、それを追うように乗り上げてきた瑛冶に胸の高まりが止まなくなる。
 それを知られたくなくて逃げ出すみたいにシーツの上を這えば、後ろから腰を鷲掴みにされて引き寄せられた。そしてぬめる舌で孔をたっぷりと舐められて、上擦った声を上げてしまう。

「ぁあっ、ぁっ、んっ……やめ、ろ」

「嫌じゃないくせに。腰が揺れてるよ。ねぇ、先輩。これ試してみる?」

「え? なに?」

 後ろを振り向くと、口の端を上げて笑う瑛冶が見慣れないものをちらつかせてくる。それは玉が連なった細長いものと、いかにもな形をかたどったおそらくバイブ。それを目に留めた瞬間、カッと頭に血が上る感じがして掴んだ枕を思いきり顔に投げつけた。

「死ね! なんでそんなもん持ってんだよクソが!」

「夜のお楽しみにどうぞって」

 小さく首を傾げて笑ったその顔に、ますます腹が立って足を振り上げる。しかし力の入らないいまの俺に蹴飛ばされた程度では、身体の大きい瑛冶はびくともしない。

「あの男、殺す! てめぇもいっぺん死んで生まれ変わってこい! 馬鹿野郎!」

「まあまあ、そう言わずに、ね。全然細いし大丈夫だよ」

「やめろ! いれん、な、馬鹿っ! んんっ」

「先輩、イキまくりだね。気持ちいい?」

 細長いごつごつとした棒を押し込まれて、軽く抜き挿しされただけでまた呆気なく果てる。けれど身体の昂ぶりはそれだけで収まることはなく、中をかき回されるとまた甲高い嬌声を上げてしまう。

「あぁっ、んっ、や、瑛冶っ」

「細いのじゃ足りない? こっちにしようか? 初めてだけど俺のより細いし、先輩のここもう柔らかくてトロトロだから平気そうだよね」

「いれ、んなって、言ってんだろ! ん……んんっ」

 指や細いおもちゃとは違う質量を感じて腰が震えた。嫌なのに身体は悦んでいて、その温度差に嫌気がさす。ぐっと奥まで押し込まれると、いままで触れられていなかった前立腺をゴリゴリとこすり上げられた。

 そしてその直接的な刺激だけでいとも容易く身体を跳ね上げて達してしまう。もう何回もイキ過ぎてどんな些細な刺激にも身体は反応した。
 それを見下ろしながら瑛冶は楽しげな笑みを浮かべている。むかついて手を振り上げたら、思いきり頬に当たってしまった。

「いいよ、気が済むまで殴っても。いつも先輩の中に入っちゃうと暴走しちゃうし。じっくり感じてる顔を見ていられないから、もっといっぱい見たい」

「ふざ、けんなっ! 見るな、馬鹿……あっあぁっ、や、やめ」

 急に震えだしたバイブがモーター音を響かせる。ぐるぐるとかき回すような動きと、ゆっくりと抜き挿しされる動きで頭が真っ白になりそうになった。その感覚はたまらなく気持ちよくて、波が何度も押し寄せては引くを繰り返す。天辺に押し上げられた昂ぶりは落ちることがない。
 イキっぱなしの俺の口からは喘ぎともつかない情けない声がこぼれて、はくはくと呼吸を繰り返すのが精一杯だった。それでも手を伸ばせば、差し伸ばされた手に握りしめられる。

「先輩、気持ちいい?」

「ぁぁっ、んっ、いい」

「ふぅん、そんなにいいんだ」

「やっ! ああっ! ぁっん、ひっ、やめっ」

 さらにモーター音が強くなり、それに合わせて速くなる動きに身体が跳ね上がる。乱暴にぐちゃぐちゃと動かされて、身体がガタガタと震えた。頭が惚けるくらいに気持ちがいい。――だけど心の奥が冷めていくのも感じる。

「えい、じっ、やめ、ろ、これ、いやだ。お前の、挿れろよ。お前のがいい!」

 掴んでいた手を引き寄せて、大きく高まる熱情をこらえるようにギリギリと力を込める。早くイキたい、我を忘れるくらい荒波に飲み込まれてしまいたい。でもそれと同じくらい、もうこれでイキたくない。

「……うん、そうだね。イキまくる先輩も可愛いけど。俺以外のに感じてるのはちょっと、いやかなりいい気分じゃないかも」

「あっ」

 ずるりと引き抜かれたそれはねっとりと糸を引いている。自分の体液をまとったそれを見せつけられて頬が熱くなった。浅ましくあんなものを挿れてよがっていたのかと思うと、自分自身が嫌になる。
 まるで淫乱な女みたいだと、プライドをへし折られた気分になるが、ぽっかりと口を開けている孔はまだ物欲しそうにしていた。その先の期待を孕んで、目の前の男に向ける視線も縋りつくようなものになる。

「そんなに挿れて欲しいの? 先輩すっかりいやらしくなったよね。もう誰かを抱くなんてできないよね」

「お前のほうこそ、早く挿れたいんだろ。すげぇ凶悪になってるぜ」

「それは、広海先輩がエロいのが悪いっ」

「……ぁあっ、んんっ」

 おもむろに足を肩に担がれて一気に根元まで押し込まれた。いままでの比ではない太さと長さに、銜え込むように孔がきつく締まる。
 覆い被さるように身体を寄せてきた瑛冶は熱い息を吐き出しながら、俺の額に口づけを落としてやんわりと笑う。腹の奥で瑛冶の熱が脈動しているのが感じられるような気がする。

「いいっ、デカくて、気持ちいい」

「先輩そうやって煽らないでよね。そんなに媚薬って効くものなの?」

 動かない瑛冶に焦れたように腰を振れば、慌てたように両手で押さえ込まれた。それでも腰を揺らして銜えた熱を舐れば、目の前の顔が快感をこらえるように歪む。

「知るかよ。仕方ねぇだろ。疼いてしょうがねぇんだよ」

「量が多過ぎたのかな? まあ、俺としてはたっぷり味わえそうで役得だけど」

「早く動けよ。ガツガツ腰振って俺を楽しませろ」

 ニヤニヤと笑みを浮かべている顔に目を細めると、突っ込まれている熱がさらに膨れ上がった。ぎちぎちと音が鳴りそうなくらい押し広げられて、さらに疼きが増してくる。

「俺、鼻血が出そう」

「んなことしてる暇があんなら、早くしろ! ケツの穴が疼いてたまんねぇ。ああっ、畜生!」

「えっ! 先輩?」

 勢いよく身体を起こすと、顔を覆って俯いている瑛冶を突き飛ばすように後ろへ転がした。それと共に埋められていたものが抜けるが、お構いなしに仰向けに倒れている身体に乗り上がる。
 そして腰を浮かすと天を向いている熱を掴んで、それを待ち望む孔へと導いた。ゆっくりと腰を落としていけば、簡単に張り詰めた熱を飲み込んでいく。

 下から貫かれるような感覚に身体はすぐさま上り詰めるが、それでも震えながらすべて銜え込んだ。挿れるだけでも二回くらいイッた気がするけれど、気持ちは萎えるどころかさらに高ぶる。

「たっぷり可愛がってやるから、しっかり硬くしておけよ」

 驚きで目を丸くしている瑛冶の根元を指でこすれば、それはビクリと震えてまた腹の奥でガチガチに硬くなる。
 そのご褒美とばかりに腰を揺らしてやると、眉を寄せて小さく声を漏らす。獣のような息を吐き出す色気を含んだ顔を見下ろして、声を誘うように唇を舐めながら腰をグラインドさせた。
 健気に震える熱はいまにも暴発しそうではあったが、とがめるように視線を向ければ唇を噛んでこらえる。主導権を握る優越感に俺はニヤリと笑みを浮かべた。