思い出の中の彼04

 最高においしい、優哉特製のシーフードカレーを食べたはずなのに、あまり記憶に残っていない。 それもこれも優哉が食事中にわざと、何度も僕を見つめてくるからだ。 可愛い悪戯ではあるけれど、自分の見た目の良さをもっと自覚してほしい。 いや、自覚し…

思い出の中の彼03

 昔は学校へ着けばすぐに教科準備室にこもったものだが、それも懐かしい思い出だ。 いまではすっかり職員室に馴染み、準備室を利用する機会も少ない。 だからこそ、あそこには優哉との思い出がたくさん詰まっているとも言える。 時折、準備室へ行くと当時…

思い出の中の彼02

 随分と懐かしい姿だ。 真っ白なブレザーにえんじ色のネクタイ。 すらりとした長身に制服がよく似合っていた、高校時代の優哉。 そういえば、あの頃はまだ名前で呼ぶなんてできなかった。『藤堂』 一歩前を歩く彼に呼びかけたら、ゆるりと振り返る。 わ…

思い出の中の彼01

 ベッドの上。けだるさの残る体で寝返りを打つと、すっと伸ばされた腕に抱き寄せられた。 僕を腕に抱き込み、優しく微笑んでいる|優《ゆう》|哉《や》は、何度も何度も薄茶色い僕の髪を撫でている。「|佐《さ》|樹《き》さん、大丈夫?」「うん。大丈夫…

ふたりの時間05

 いつも触れて知っているつもりでいたその身体は、思った以上に華奢で抱きしめるのが少し怖いくらいだった。 けれど彼の腕はすがりつくように強く俺の背に抱きついて、真っ白な肌を朱に染めると、涙を浮かべながら何度もうわごとみたいに好きだと言うから、…

ふたりの時間04

 繰り返される愛撫に熱い息がひっきりなしに口から漏れて、かなり自分が興奮しているのがわかる。そしてそんな僕を追いつめるみたいに、藤堂の手は下へ下へと降りてゆく。そして未知なる場所に指を滑らせた。「佐樹さん、大丈夫?」「あ、ああ、うん」 気遣…

ふたりの時間03

 僕から視線をそらさずにさり気なく眼鏡を外した藤堂の指先を見ていたら、ふっと目の前の口角が持ち上がった。それに気がつき慌てて視線を上へ向ければ、目が合う前に唇を塞がれてしまう。「ぅんっ……」 構える間もなく深い口づけで攻められると残念なくら…

ふたりの時間02

 それに藤堂は根っこが真面目だから、下世話な話が好きじゃない。というよりは、あまり昔の自分に触れられたくないのかもしれない。「あの人の言うこと真に受けないでくださいよ。反応を楽しんでるだけなんですから」「んー、それはわかってはいるんだけどな…

ふたりの時間01

 週末、いつものように藤堂はやってくる。今日はバイト先の歓送迎会とやらで、普段よりずっと遅い時間だけど。 日付も変わりかけた頃で、それをすまなそうにしながら帰ってきた。こちらもよく都合が悪くなり断ることもあるので、そんなことは気にしなくとも…

02.Non Sugar?

 優哉は普段、こちらがいくら粉をかけてもなかなかその気にならない。そっちに関して淡白なのかと言えば、案外そうでもないような気はするのだが、反応がわかりにくくて仕方ない。 でも――そんなつれない男が今日は珍しいくらい、まったく抵抗を示さない。…