どこへ転んでも不安が尽きないこの感じ
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 まっすぐな感情に振り回されそうになる。そこから逃れようとするけれど、やたらと真剣な目がこちらを見据えて、瞬きも出来ないほどに奥底までのぞき込まれた。
その瞳の中に自分の姿を見つけると、なぜだか火を噴くみたいに顔が熱くて、ついに根負けして目をそらす。

「笠原さん、明日は大学お休みですよね。お昼に迎えに行きます。一緒に食事をして、少し自分とお話をしてください」

「……ちょ、ちょっと待った! あんた」

「鶴橋です。鶴橋冬悟つるはしとうご。名前、覚えてください」

「つ、鶴橋さん、あんたノンケでしょ? 気まぐれでうろちょろされても迷惑なんだけど」

「気まぐれではないです。男の人は初めてですけど、本気なので心配しないでください」

 そんなに満面の笑み浮かべられても心配だっつーの! それが気まぐれじゃない証明にはなってない。もの言いたげに睨み付けたら、ますます優しい顔で微笑まれる。なんだこのモヤモヤむずむずする感じ。すごく気持ち悪い。

勝利しょうり、その人とデートするの?」

「え? いや、そういうわけじゃ」

「デートしたら絶対に押し負かされるよ」

 しどろもどろになった俺に、光喜みつきが耳元でぼそりと囁く。耳のフチに唇がつきそうな近さで、思わず飛び上がってしまった。慌てて身体を離そうとするが、腕を掴んでいる手に引き寄せられる。

「断るならいま、絶対」

「笠原さん」

「は、はいっ!」

 耳元で話す光喜に気を取られていたら、空いたもう片方の腕を鶴橋に掴まれた。それに驚いて声が思いっきり上擦る。そしてその自分の反応にまた顔が熱くなった。

「二人きりが嫌なら、その人を連れてきてもいいですよ」

「うわぁ、すごい強気だね。まあ、いいけどさ。ほんとについて行ってもいいなら俺も行く」

 えー、ちょっと待って。確かに二人っきりも困るけど、この変な三角関係のままで行くのもすごい不安。しかし光喜の言うように二人きりになった途端に押し負かされそうではある。

「きっとあれよあれよという間に押し倒されて」

「やめろ! 変な想像すんな! 俺はタチだ!」

「あ、自分はどっちでもいいですよ?」

 俺たちのやり取りに目の前で目を瞬かせていた男が、急に爆弾を投下する。やめてくれ、そういうカミングアウトいまいらない!

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