恋は落ちるものと言いますが、簡単に落ちすぎ!
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 こういう急展開は予想していなかった。なんでいきなり光喜はそんなことを言い出したのだろう。どういう心境の変化だ? いままでだってこうして傍にいたのに、なんでそんなこと思うんだよ。
 確かにここ二年くらい疎遠になっていたけど、俺たちの関係性はそれほど変わってはいなかったはずだ。それなのにこの数時間で変わる心境って、原因ってなに? 鶴橋の感情に感化されたのか?

「光喜、冷静になって考えろ」

「俺はかなり冷静だけど」

「いや、絶対に冷静じゃない。なんで俺がいいんだよ。鶴橋に影響されてるんじゃないのか」

「あー、それは否定できないけど。だけどいま勝利がすごく可愛く見えちゃってるんだよね。なんか必死になってるところがたまんないよね」

「やっぱり正常な判断じゃないだろ!」

「勝利、恋に落ちるのって判断を狂わすものだよ」

 そんなキラッキラの笑みを浮かべられても全然嬉しくない。なんか格好いいこと言ったとか思ってるなら間違いだぞ! 俺はそんな甘ったるい台詞に騙されたりしないんだからな。
 しかし無駄なくらい爽やかな笑みに睨みを利かせても、ちっとも俺の意志を汲み取ってくれない。それどころかこちらに腕を伸ばしてくる。とっさに後ろに下がろうとしたが、それより光喜の動きのほうが早かった。

「み、光喜! 離せ馬鹿!」

 目立ってる! ものすごく目立ってる! さっきにキスは不意をつかれたから気づいた人は少なかったみたいだが、両腕で思いきり包み込むように抱きしめられているいまは人目を引いている。
 さらに頬ずりするように顔を寄せられて身体が飛び上がった。

「笠原さん!」

 しかしぎゅうぎゅうに抱きしめられていたけれど、急に光喜の身体が少し離れる。俺も光喜も一瞬目を瞬かせて驚いてしまったが、鶴橋が俺たちのあいだに割り入ってさらに引き剥がす。鶴橋の突然の登場に驚いていると広い背中に庇われた。

「光喜さん、こういうことは控えるべきだって言いましたよね。道の真ん中で抱きつくとか。笠原さんの迷惑になることはやめてください」

 あ、さっきのキスシーンは見られてなかったんだな。あんなところ見られてたらガチ切れられてたかもしれない。どうやら一つだけ災難は避けられたようだ。
 しかし男二人に囲まれてる俺、と言う状況をなんとかしないと。現状脱出が先決だ!

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