ぐるぐると渦巻く感情の真ん中が見えない
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 確かにほんの少しほだされている気がした。優しくしてもらえることに少し浮かれているんだと思う。特に鶴橋にはかなり気持ちを持って行かれそうになっている。やることなすことまっすぐだから、それに流されそうでぐらぐらとする感じ。

「だけど俺は」

「ちょっと視野を広く持ちなよ。勝利は好きになる可能性を持ってる。言いたくないけど、この人のことちょっと気になってるんでしょ?」

「え? 笠原さん、ほんとですか?」

「そ、それは、誰だって優しくされたらいい気になるだろう」

 これは自然な感情だ。別に鶴橋だから、光喜だからほだされてるわけじゃない。だけどそう思うのに、二人の視線に言葉がそれ以上出て来ないのはどうしてだろう。
 自分の気持ちを誤魔化しているから? いや、そんなはずない。

「あー、またぐるぐるしてる。勝利、そんなに悩まなくたっていいじゃん。好きになったっていいんだよ。自分に素直になりなよ」

 光喜の両手が伸ばされて、俺の頬を包んだ。その手のぬくもりに俯きがちになっていた視線を持ち上げる。こちらを見つめる光喜の目はいままでに見たことがないくらいに優しかった。

「あ、もちろん俺のほうを好きになってよね」

「光喜、お前さ。前向きすぎるだろう」

「あったり前じゃない。幼馴染みから恋人になるのって大変なんだから」

 にっこりと笑みを浮かべた光喜に驚かされる。自覚があったんだ、この関係を変えることが大変なんだって。

「笠原さん! 光喜さんばかりではなくて自分も見てください」

「え、いや、別に、光喜がいいわけじゃない!」

 ふいに腕を強く引かれた。驚いて視線を向けるといつになく真剣な鶴橋が傍にいて、急に近づかれてやけに肩が、心臓が跳ね上がる。意識するとそれはなおさらひどくなっていく。ドキドキとする胸にうろたえてしまう。

「ちょっと今日は、これで解散にしよう」

「待ってください! このままうやむやにされたくないです。このまま誤魔化してなかったことにしようとしていませんか? 少しでも自分のことを考えてくれているなら、目を背けないでください。こちらだって真剣なんです。冗談やからかいでこんなこと言えないってわかりますよね」

 わかるよ。わかるから逃げたいって思うんだ。