その甘さに溶かされてしまいそうになる
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 言われなくたってわかってる。どんなに頭から否定しても、誤魔化しても、二人の目が本気なことくらいとっくに気づいてる。だけどその目が真剣なほど逃げ出したくなるんだ。俺は好きになっちゃいけないって心がブレーキをかける。
 もう、傷つきたくないんだ。

「笠原さん、好きです。なにが引き金だったか、それは自分でも正直言うとわかりません。それでもいまはあなたのことで頭がいっぱいなんです。お願いです、自分を選んでくれませんか」

「やめてくれよ、そんなこと言うの。ずるいだろう。いままでそんなの言われたことない」

 顔が尋常じゃないくらい熱い。自分でも真っ赤になっているのがわかるくらいだ。顔を背けたくても、腕を引かれて向き直される。

「好きです、何度だって言います。あなたの中に自分が刻まれるくらい。あなたが振り向かずにはいられないくらい」

「なんだよそれ、歯が浮くって」

 馬鹿、喜ぶな。こんなこと言われたくらいで胸をときめかせている場合じゃないだろう。だけどここまで来たら、なんで自分がそこまで意固地になる必要があるんだって思えてくる。
 好きだって言ってくれる人と、恋をすることは悪いことじゃないだろう? だけどそう思ってもやっぱり、また突き放されるのが怖い。

「誓ってもいいです。自分があなたに振られることがあっても、自分があなたを振るなんてことは絶対にないって」

 相変わらずまっすぐな目で俺を見る。その目を見ると信じてもいいんじゃないかって、心が揺れるんだ。胸が苦しいのはどうしてだろう。喉が熱くなって、感情が溢れそうになった。

「もう一回、やり直してくれよ。本当にあんたのことが信じられるのか、確かめるから」

「……わかりました。もう一回デートしましょう。今度は二人っきりで」

 小さな俺の声にやんわりと微笑んだ鶴橋は掴んでいた腕を放すと、するりと手を滑らせて俺の手を掴んだ。そしてそれを恭しく持ち上げてそっと手の甲に唇を寄せる。

「ちょっ! なにっ?」

「ほんとは唇にキスしたいんですけど、いまはこれだけで。自分は笠原さんが嫌がることはしませんから」

 慌てふためく俺に鶴橋は少し困った表情を浮かべた。その顔にふと気づく、もしかしてあの時のキスは見られてた?

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