やっぱり普段とギャップがあると、それを可愛いと思えるか幻滅するかのどちらかだよな。あれだけ普段紳士的イケメンっぷりを発揮してると、落差はデカい。その点、光喜はギャップがない。
付き合い出すとちょっと甘えたになるらしいが、大概の女の子はそれが可愛くてメロメロになる。モテるから彼女いない時のほうが珍しいくらい。
「なあ、光喜。なんでいま彼女いないんだ?」
「え? なにそれ」
唐突な俺の言葉に電話の向こうから訝しげな声が聞こえる。ちょっとマジな声になって、言ったこちらが焦ってしまう。好きだって言ってきてる相手にする質問じゃなかったな。
「お前が相手切らしてるの珍しいなぁと思って」
「なんだかそういう気分じゃなかったんだよね」
「ふぅん」
イケメンにはイケメンの悩みがあるのか、なんだか重たいため息をついた。でも光喜みたいな男なら俺なんかに構わなくたって、もっと可愛くて性格がいい子がいるだろうに。
「あ、いま俺なんかじゃなくてもいいのにって思ったでしょ! いまは勝利がいいの。だって一緒にいて安心できるし」
「まあ、確かにお前といるのは気楽でいいよな」
「でしょー! それより土曜日どこに行く? 映画、面白いのやってるよ。それとも遊園地とか行く? 絶叫系に乗りたいよね」
付き合い長い分だけお互いのことよく知っているし、光喜といると楽しいのは確かなんだよな。大学入って疎遠になっていたのが不思議なくらい。久しぶりにこうして毎日のように電話をしていままでの感覚を思い出す。
「遊園地、お前とよく行ったよな」
「久しぶりにいいよね。行こっか」
「うん」
二つを天秤にかけて選ばなくちゃいけないこの状況は、正直言うとあまり考えたくないんだけど。もっと真面目に向き合うべきかなとも思う。逃げることばかり考えて、態度が曖昧すぎたよな。
「あの人とはどこに行くの?」
「いや、特には話してない」
「そうなんだ。結構のんびりしてるね」
「さっきも会ったし、明後日も来るんじゃないか」
「週三で来るんだっけ。絶対に勝利目当てだよね」
「あ、そうだったのか」
そういや深く考えていなかったけど。あの人、俺がバイト始めてからコンビニに来るようになったんだった。